将来の公的年金の財政状況を検証する「財政検証」の見通しが、2024年7月3日に発表されました。
年金受給を控える50歳の人は、いくら年金を受け取れる見通しなのでしょうか。
今回は、財政検証の結果から将来の年金受給額がいくらになる見通しかを解説します。
記事の後半では財政検証で検討された項目も解説するので、ぜひ最後までご覧ください。
1. 将来の年金額はいくらになる?
厚生労働省が2024年7月3日に実施した財政検証では、モデルケースの年金額は以下のとおりです。
- 男性:14万9000円
- 女性:9万3000円
年金額は夫婦あわせて25万2000円でした。
財政検証では、以下のモデルケースで年金の受給額をシミュレーションしています。
- 成長型経済移行・継続ケース(実質賃金上昇率1.5%)
- 過去30年投影ケース(実質賃金上昇率0.5%)
それぞれのケースごとに、将来の年金額がいくらになるのか確認しましょう。
1.1 成長型経済移行・継続ケース
成長型の場合、2024年度時点で50歳の人が受け取る将来の年金額は、以下のとおりになりました。
- 男性:15万6000円
- 女性:10万9000円
モデルケースの年金額に比べて、2万3000円増加しました。
次に、過去30年の投影ケースを確認しましょう。
1.2 過去30年の投影ケース
過去30年投影ケースでは、年金額は以下のとおりになりました。
- 男性:14万1000円
- 女性:9万8000円
モデルケースの年金額に比べて、3000円減少する結果となりました。
賃金上昇率が過去30年投影ケースより下回る場合は、さらに年金額が少なくなる可能性があります。
では、将来の年金額が現在の所得から何割となるのか確認しましょう。
2. 将来の年金額は所得の何割?
財政検証では、将来の年金額を「所得代替率」で試算します。
- 所得代替率:将来の年金額が現役世代の手取り収入と比べどのくらいの割合か示すもの
たとえば、所得代替率が50%であれば、手取り収入の50%が公的年金の受給額となります。
では、将来の経済成長率で所得代替率がどのように変わるのか、それぞれのケースで確認しましょう。
2.1 成長型経済移行・継続ケース
成長型の場合、公的年金の所得代替率は57.6%でした。
2024年時点で65歳になる人の所得代替率が61.2%なので、3.5ポイント低下しています。
では、過去30年の投影ケースを確認しましょう。
2.2 過去30年の投影ケース
過去30年投影ケースでは、公的年金の所得代替率は56.7%でした。
2024年時点で65歳になる人の所得代替率と比較すると、4.5ポイント低下しています。
いずれの条件でも、所得代替率は今より下回る結果となりました。
では、今回の財政検証で検討された項目について確認しましょう。
3. 今回の財政検証で検討された項目
今回の財政検証で検討された主な項目は、以下の2つです。
- 社会保険の加入要件
- 国民年金の納付期間延長
それぞれの項目について解説しましょう。
3.1 社会保険の加入要件
まず財政検証で検討された項目の1つが「社会保険の加入要件」です。
さまざまなケースで社会保険に加入した場合の財政状況をシミュレーションしました。
現行制度では、社会保険の加入要件を以下のとおりに設定しています。
- 従業員数が101人以上
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 賃金が月額8万8000円以上
- 2ヵ月を超える雇用の見込み有
- 学生ではない
2024年10月以降は、従業員数が51人以上の場合に拡大されます。
今回の財政検証では、企業規模の要件を撤廃した場合の所得代替率や、将来の年金額の影響を試算しています。
その結果、企業規模の要件を撤廃する方針で意向が固まりました。
企業規模の要件を撤廃すると、約90万人の短時間労働者に影響があると想定しています。
3.2 国民年金の納付期間延長
次に、国民年金の納付期間延長を検討していました。
現行制度では、国民年金の納付期間は20歳から59歳までとなっています。
新たな検討案では、65歳まで納付期間を延長した場合のシミュレーションも行われました。
2024年度の納付額は月額1万6980円なので、もし納付期間が5年延長されたら、保険料の負担総額は100万円を超える見込みです。
しかし、今回の財政検証では国民年金の納付期間延長は見送りとなりました。
納付期間の延長案が見送りとなった理由は、社会保険の加入者が増えたことにより保険料が増収となったためです。
次の財政検証で、納付期間の延長案が採用されるか、引き続き注目が集まります。
4. 次回の財政検証は2029年
財政検証は5年に1度行われます。
財政検証では、将来の年金制度に大きくかかわります。
次回の財政検証が行われる2029年には、どのような検討案や制度が実施されるのか、引き続き注目していく必要があるでしょう。
参考資料
川辺 拓也