3. 今回の財政検証で検討された項目

今回の財政検証で検討された主な項目は、以下の2つです。

  • 社会保険の加入要件
  • 国民年金の納付期間延長

それぞれの項目について解説しましょう。

3.1 社会保険の加入要件

まず財政検証で検討された項目の1つが「社会保険の加入要件」です。

さまざまなケースで社会保険に加入した場合の財政状況をシミュレーションしました。

現行制度では、社会保険の加入要件を以下のとおりに設定しています。

  • 従業員数が101人以上
  • 週の所定労働時間が20時間以上
  • 賃金が月額8万8000円以上
  • 2ヵ月を超える雇用の見込み有
  • 学生ではない

2024年10月以降は、従業員数が51人以上の場合に拡大されます。

今回の財政検証では、企業規模の要件を撤廃した場合の所得代替率や、将来の年金額の影響を試算しています。

その結果、企業規模の要件を撤廃する方針で意向が固まりました。

企業規模の要件を撤廃すると、約90万人の短時間労働者に影響があると想定しています。

3.2 国民年金の納付期間延長

次に、国民年金の納付期間延長を検討していました。

現行制度では、国民年金の納付期間は20歳から59歳までとなっています。

新たな検討案では、65歳まで納付期間を延長した場合のシミュレーションも行われました。

2024年度の納付額は月額1万6980円なので、もし納付期間が5年延長されたら、保険料の負担総額は100万円を超える見込みです。

しかし、今回の財政検証では国民年金の納付期間延長は見送りとなりました。

納付期間の延長案が見送りとなった理由は、社会保険の加入者が増えたことにより保険料が増収となったためです。

次の財政検証で、納付期間の延長案が採用されるか、引き続き注目が集まります。

4. 次回の財政検証は2029年

財政検証は5年に1度行われます。

財政検証では、将来の年金制度に大きくかかわります。

次回の財政検証が行われる2029年には、どのような検討案や制度が実施されるのか、引き続き注目していく必要があるでしょう。

参考資料

川辺 拓也