総務省が発表した4月の消費者物価指数によれば、生鮮食品およびエネルギーを除く総合指数は前年同月比で2.4%上昇し、物価高が続いています。
この物価高の中、支援策として「住民税非課税世帯に対する臨時特別給付金」などが実施されました。
受給対象世帯の約35%が65歳以上のシニア世帯であるため、物価高がシニア世帯に与える影響は大きいと言えるのではないでしょうか。
ただし、すべてのシニア世帯が住民税非課税世帯に該当するわけではなく、該当条件には注意が必要です。
そこで今回は、65歳以上の「住民税非課税世帯」に焦点を当て、その該当条件を確認していきます。
後半ではシニア世帯のお金事情についてもチェックしますので、あわせてご確認ください。
1. 住民税のしくみ
公的なサービスは国と地方で分担され、その費用は主に税金でまかなわれています。
地方税は地域住民が広く負担を分担するもので、住民税がその代表的な例です。
個人住民税は、その市区町村や都道府県に住む個人が負担する税金で、納税額は個人によって異なります。
具体的には前年の所得をもとに、均等割と所得割(所得×約10%)の合計額で決まります。
所得が少ない場合、「住民税非課税世帯」として住民税が課税されなくなりますが、どの程度の所得が少なければ非課税になるのでしょうか。
2. 住民税非課税世帯となる対象者はどんな人?
次に、「住民税非課税世帯」と「住民税均等割のみ課税世帯」の概要を確認しましょう。
私たちの給与や年金からは、「所得税」や「住民税」が毎月天引きされていますが、その中で「住民税」が非課税となる世帯を「住民税非課税世帯」と呼びます。
住民税には、一定の所得がある場合に課税される「均等割」と、所得に応じて課税額が変動する「所得割」の2種類があり、この両方が非課税の場合に「住民税非課税世帯」となります。
一方で、「住民税均等割のみ課税世帯」の場合は、「所得割」は非課税で、「均等割」は課税している世帯を指します。
次章では「住民税非課税世帯」の所得目安についても確認していきます。
3. 「住民税非課税世帯」の所得目安
以下の要件を満たした世帯が「住民税非課税世帯」に該当します。
- 生活保護法の規定に基づく生活扶助を受けている方
- 障がい者、未成年者、寡婦またはひとり親で、前年の合計所得金額が135万円以下(給与所得者の場合、年収204万3999円以下)である方
- 前年の合計所得金額が、自治体ごとの基準を下回る方
3の基準については自治体ごとに異なりますのでご注意ください。
参考までに、東京23区内の所得目安は以下の通りです。
- 同一生計配偶者または扶養親族がいる場合:35万円×(本人・同一生計配偶者・扶養親族の合計人数)+31万円以下
- 同一生計配偶者および扶養親族がいない場合:45万円以下
4. 「住民税非課税」の3割以上が65歳以上の高齢者!理由は?
所得が一定以下の場合、住民税非課税世帯となることが分かりました。
では、現在の「住民税非課税世帯」はどのくらいの割合なのでしょうか。
厚生労働省の「令和4年国民生活基礎調査」によると、年代別の住民税非課税世帯の割合(全世帯に占める住民税非課税世帯の割合)は以下の通りです。
- 60歳代:19.2%
- 70歳代:34.9%
- 80歳代:44.7%
- 65歳以上:35.0%
- 75歳以上:42.5%
各年代の住民税非課税世帯の割合を見ると、80歳代が最も多く、年代が上がるにつれて割合が増加しています。
年金収入があっても、収入が一定以下となっている世帯は「住民税非課税世帯」となります。
公的年金は「雑所得」として扱われ、その収入から「公的年金等控除」が適用されます。
この控除は給与所得控除よりも高く設定されており、同じ収入額でも実際の所得が低くなりやすくなるのです。
このため、シニア世代は現役世代よりも住民税非課税世帯に該当しやすいといえます。
5. 2024年度(令和6)年度「新たに」住民税非課税等になった人にも10万円給付へ
政府は、2024(令和6)年度分の個人住民税について、「新たに住民税非課税となった世帯」に対し、1世帯当たり10万円の給付を実施します。
「均等割」のみが課税され、「所得割」が非課税となっている世帯にも10万円が支給されますが、2023年度に給付を受けた世帯は対象外となっています。
また、2023年度の給付金を「未申請・辞退」により受け取っていない場合でも、同様に対象外となる点には注意が必要です。
さらに、18歳以下の子どもがいる場合は、1人当たり5万円が給付されます。
給付要件についての詳細は、お住いの自治体ホームページをご確認ください。
ここまで「住民税非課税世帯」について解説してきましたが、シニア世代は実際どれくらいの資産を持っているのでしょうか。
次章ではシニア世代の貯蓄事情について見ていきます。
6. シニアの貯蓄事情は?70歳代の貯蓄額平均と中央値
今の高齢者はどれほどの金融資産を保有しているのでしょうか。
金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査(令和5年)」から、70歳代の単身世帯・二人以上世帯の貯蓄額を見ていきます。
6.1 70歳代「単身世帯」の貯蓄額一覧表
はじめに単身世帯の貯蓄額を確認しましょう。
- 金融資産非保有:26.7%
- 100万円未満:5.8%
- 100~200万円未満:4.3%
- 200~300万円未満:4.1%
- 300~400万円未満:3.3%
- 400~500万円未満:2.5%
- 500~700万円未満:6.6%
- 700~1000万円未満:5.1%
- 1000~1500万円未満:8.6%
- 1500~2000万円未満:5.3%
- 2000~3000万円未満:8.2%
- 3000万円以上:17.3%
平均:1529万円
中央値:500万円
70歳代の単身世帯における貯蓄額の平均は1529万円、中央値は500万円でした。
中央値が500万円ということはおよそ半分の人の貯蓄が500万円以下ということでもあります。
6.2 70歳代「二人以上世帯」の貯蓄額一覧表
続いて二人以上世帯における貯蓄を見ていきます。
- 金融資産非保有:19.2%
- 100万円未満:5.6%
- 100~200万円未満:5.1%
- 200~300万円未満:4.3%
- 300~400万円未満:4.7%
- 400~500万円未満:2.5%
- 500~700万円未満:6.2%
- 700~1000万円未満:5.8%
- 1000~1500万円未満:10.2%
- 1500~2000万円未満:6.6%
- 2000~3000万円未満:7.4%
- 3000万円以上:19.7%
平均:1757万円
中央値:700万円
平均額を見ると貯蓄に余裕のあるシニアが多い印象を受けますが、「金融資産非保有」は単身世帯で26.7%、二人以上世帯で19.2%となっており、生活に困窮している世帯も少なくなさそうです。
また、老後は主な収入が年金のみとなる世帯も多く、70歳代になってから貯蓄を取り崩して生活する世帯も多いです。
老後の生活は基本の生活費に加えて、医療費や介護費など、万が一事態に備えるための予備資金も必要になります。
物価上昇・少子高齢化が進む日本では、シニア世帯への給付金は想像以上に需要の高いものになっているかもしれません。
7. まとめにかえて
住民税非課税世帯への給付金や、シニア世代のお金事情も交えて確認してきました。
老後はお金が足りなく生活が困窮するリスクも高まるため、昨今の給付金が助けになることもあるでしょう。
ただし、物価高で苦しんでいるのは低所得世帯だけではありません。
国民全員が賃上げの施策などがどのように進んでいくのか、注視していく必要がありそうですね。
参考資料
- 総務省「個人住民税」
- 財務省「住民税について教えてください。所得税とはどう違うのですか?そもそも国税と地方税の違いはなんですか?」
- 厚生労働省「令和4年国民生活基礎調査」
- 金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](令和5年)」
- 金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和5年)」
中本 智恵