年収1000万円以上と聞くと「高収入」「お金持ち」というイメージをもつ方も多いのではないでしょうか。
年収が高ければ、その分貯蓄や投資に回しやすくなりますが、実際のところ年収1000万年以上の貯蓄事情はどのようになっているのか気になります。
総務省「2020年基準 消費者物価指数 東京都区部 2024年(令和6年)6月分(中旬速報値)」によると、東京都区部の消費者物価指数は2020年を100として107.5まで上昇しました。
物価があがり実質賃金が低下する昨今においては、少しでも年収を高めたいと思うものです。
しかし、高年収の人が必ずしも十分な貯蓄をできているとは限りません。
本記事では、総務省統計局による最新データから、年収1000万円以上の貯蓄実態について紹介していきます。
記事の後半では、高収入なのに貯蓄が増えない「高所得貧乏」になる理由についても紹介しているので、あわせて参考にしてください。
1. 年収1000万円以上の割合はどれくらい?
国税庁の「2022(令和4)年分 民間給与実態統計調査」によると、給与所得者の1人当たりの平均年収は458万円となっています。
上記のとおり、日本の一般的な年収は「400万円台」となっていますが、年収1000万円以上の割合はどのくらいなのでしょうか。
国税庁の同調査によると、年収1000万円超の割合は下記の結果となりました。
1.1 「年収1000万円超」の構成割合
- 全体:5.4%
- 男性:8.4%
- 女性:1.5%
年収割合は幅広い金額に分布していますが、年収100万円から700万円に割合が集中しており、年収1000万円超以降は極端に割合が少なくなっています。
給与所得者のうち年収1000万円を超えている人の割合は、全体で5.4%と1割にも到達していません。
上記から、会社員といった給与所得者が「年収1000万円超」を目指すのは、ハードルが高いことがみてとれます。
では、「世帯年収1000万円超」の場合はどうでしょうか。
次章にて、世帯年収1000万円超の割合についても見ていきましょう。
2. 世帯年収1000万円超の割合は多くなった?
厚生労働省の「2023(令和5)年 国民生活基礎調査の概況」によると、世帯年収の割合は下記の結果となりました。
2.1 所得金額階級別世帯数の分析(2023年調査)
- 100万円未満:6.9%
- 100~200万円:14.6%
- 200~300万円:14.5%
- 300~400万円:12.9%
- 400~500万円:10.7%
- 500~600万円:8.5%
- 600~700万円:6.4%
- 700~800万円:5.8%
- 800~900万円:4.6%
- 900~1000万円:3.7%
- 1000~1100万円:2.6%
- 1100~1200万円:2.3%
- 1200~1300万円:1.8%
- 1300~1400万円:1.0%
- 1400~1500万円:0.8%
- 1500~1600万円:0.7%
- 1600~1700万円:0.3%
- 1700~1800万円:0.3%
- 1800~1900万円:0.3%
- 1900~2000万円:0.2%
- 2000万円以上:1.3%
世帯年収1000万円超の割合は全体の11.6%で、給与所得者の年収1000万円超の割合よりも高くなっていることがわかります。
近年では共働き世帯が増えていることから、夫婦で協力して世帯年収1000万円を目指す世帯が多いのでしょう。
実際に、総務省統計局の「家計調査」によると、年収1000万円超の世帯のうち約7割が、共働き世帯です。
さらに、年収が低い世帯ほど共働き率が低くなっていることから、「収入の高さと共働き率」は大きく影響し合っていることがうかがえます。
年収が高いほど、貯蓄も多い印象を持つ方もいるかもしれませんが、世帯年収1000万円以上の貯蓄事情はどのようになっているのでしょうか。
次章にて、世帯年収1000万円以上の平均貯蓄額を見ていきましょう。
3. 世帯年収1000万円以上の平均貯蓄額
総務省統計局の「家計調査」によると、世帯年収1000万円以上の平均貯蓄額は下記のとおりです。
- 年収1000~1250万円:平均貯蓄額2029万円
- 年収1250~1500万円:平均貯蓄額2418万円
- 年収1500万円以上:平均貯蓄額4014万円
世帯年収1000万円以上の平均貯蓄額は、2000万円を超えており、年収1500万円以上の世帯は平均貯蓄が4014万円となっています。
この数値をみて「年収が高い世帯は貯蓄も多い」と思った方もいるかもしれませんが、これは「純粋な貯蓄額」ではありません。
老後資金や教育費などに充てられる純粋な貯蓄を確認するためには、上記の貯蓄額から「負債額」を差し引く必要があります。
次章にて、世帯年収1000万円以上の「負債額」と「純貯蓄額」について確認していきましょう。
3.1 世帯年収1000万円以上の「負債額」と「純貯蓄額」
総務省統計局の「家計調査」によると、世帯年収1000万円以上の負債額と純貯蓄額は下記の結果となりました。
- 年収1000~1250万円:負債額:1322万円、純貯蓄額:707万円
- 年収1250~1500万円:負債額:1387万円、純貯蓄額:1031万円
- 年収1500万円以上:負債額:1550万円、純貯蓄額:2464万円
年収1000万円以上の世帯の平均負債額は1000万円台となっており、住宅ローンや車のローンなど、高額な負債を抱えている世帯が多い現状がみてとれます。
そのため、世帯年収1000万円以上の平均貯蓄額は2000〜4000万円超となっていますが、負債を差し引いた純貯蓄額は700〜2000万円台となります。
上記をふまえ、世帯年収1000万円以上であっても、計画的な家計管理と貯蓄努力がなければ、十分な資産形成は難しいと言えます。
これは年収1000万円以上の世帯に限らず、どの年収世帯にも言えるため、ご自身の家計状況に合わせて、貯蓄計画を立てていくことが大切でしょう。
4. 世帯年収1000万円以上でも貯蓄ゼロの世帯も?高所得貧乏の理由
前章では、世帯年収1000万円以上の平均貯蓄額について見ていきました。
純貯蓄額は700〜2000万円台となっていることから、世帯年収1000万円以上であれば「1000万円前後の貯蓄をしているのが普通」と考えてしまいますが、実際は高収入でも貯蓄が全くない世帯も存在します。
実際に、金融広報中央委員会の調査によると、世帯年収1000万円超の約1割が金融資産非保有、いわゆる「貯蓄ゼロ世帯」となっています。
- 1000〜1200万円未満:11.5%
- 1200万円以上:9.7%
1000万円超の高収入を得ている世帯であっても、貯蓄ゼロになってしまう理由はいくつか考えられます。
世帯年収が高いにもかかわらず、高所得貧乏になる理由として「高額な住宅ローン返済」や「浪費が多い」ことから、貯蓄に回す資金の余裕がないことが挙げられます。
特に、都市部に住む子育て世帯の場合は、家賃や教育費が高額になり、貯蓄が難しくなるケースが多いです。
また、日本では高収入になるほど、税金負担が大きくなるだけでなく、公的な助成や給付金が所得制限により受けられなくなります。
実際に、課税所得1000万円超の場合は所得税の税率が33%〜45%となっており、3分の1以上を税金として徴収されてしまうのです。
このことから、高収入でも手取り額が思ったより増えず、さらに支出割合が多くなり、収入を貯蓄に回す余裕がない世帯も一定数いるのだとうかがえます。
「年収をあげて生活を豊かにしたい」と考えている方は、世帯年収を上げるための手段だけでなく、家計収支の見直しや税金対策などもあわせて行えると、計画的に貯蓄がしやすくなるでしょう。
税金対策においては、iDeCoや生命保険控除、住宅ローン控除など多くの税制優遇制度があるため、これらを積極的に活用して手元に残るお金を増やせると良いです。
5. 貯蓄は計画的に行おう
本記事では、総務省統計局による最新データから年収1000万円以上の貯蓄実態について、紹介していきました。
年収1000万円以上の世帯は、平均的な年収世帯よりも貯蓄額が多いですが、負債額も高額であることがわかりました。
中には、高収入にもかかわらず「貯蓄ゼロの世帯」も存在することから、年収が高い=貯蓄も多いとは一概には言えないとうかがえます。
もちろん、収入が多いことで貯蓄面では有利になりますが、計画的な貯蓄を行うことで収入が低くても純貯蓄額を増やすことはできるでしょう。
まずは、家計の見直しを行い、毎月の給与から10%程度を貯蓄に回してみることをおすすめします。
参考資料
- 国税庁「2022(令和4)年分 民間給与実態統計調査」
- 総務省統計局「家計調査 / 貯蓄・負債編 二人以上の世帯 詳細結果表」
- 厚生労働省「2022年 国民生活基礎調査の概況II 各種世帯の所得等の状況」
- 金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和5年)」
- 国税庁「No.2260 所得税の税率」
太田 彩子