はじめに

自身の人生をより良いものにするために、どのような仕事をし、また、どのように働くかということは、非常に重要なことです。より良い職場を求めて、今の職場を退職し、転職をするという人もいるでしょう。しかし、転職希望者を受け入れる会社側にとって、応募者がどのように前職を退職したのか、といったことは、採用の可否を決定する重要な要素となります。

そこで、この記事では、自己都合退職と会社都合退職には、いったいどのような違いが存在しているのか、また、それぞれのメリット・デメリット、これらを転職の成功に繋げるための工夫といった点について、ご紹介します。

目次

1. 自己都合退職と会社都合退職の違いとは
2. 自己都合退職と会社都合退職のそれぞれに当てはまるケース
 2-1. 自己都合退職に分類されるケース
 2-2. 会社都合退職に分類されるケース
3. 自己都合退職と会社都合退職による失業保険受給の違い
 3-1. 自己都合退職の場合
 3-2. 会社都合退職の場合
4. 自己都合退職と会社都合退職のそれぞれのメリット・デメリット
 4-1. 転職活動
 4-2. 解雇予告手当
5. 自己都合退職と会社都合退職、それぞれでの履歴書の書き方
 5-1. 自己都合退職をした場合の履歴書の書き方
 5-2. 会社都合退職をした場合の履歴書の書き方
6. 自己都合退職、会社都合退職の退職理由の伝え方
7. 自己都合退職、会社都合退職を転職先に伝えるには
 7-1. 自己都合退職の場合
 7-2. 会社都合退職の場合

1. 自己都合退職と会社都合退職の違いとは

会社を退職する理由は人それぞれですが、これらは以下のように分類できます。

自己都合退職
労働者本人の都合や意志による退職を指します。
例えば、妊娠、結婚、介護、病気療養、引越しなどが挙げられます。また、スキルアップキャリアアップのための転職を目的とした退職も、こちらに分類されます。

会社都合退職
会社側が一方的に、労働者との間に結ばれている労働契約を解除して、退職させることを指します。
例えば、会社の経営不振や、それに伴うリストラ、倒産といったものが挙げられます。また、会社の早期退職制度に応募して退職した場合も、こちらに分類されます。

自己都合退職と会社都合退職では、退職の際の手続きが異なってきます。また、どちらの理由で退職するかによって、退職金の額に差が出る、次の転職のための活動に不利益を被る、などといったことが、起こる可能性があります。

2. 自己都合退職と会社都合退職のそれぞれに当てはまるケース

先ほどは、簡単な具体例とともに、自己都合退職と会社都合退職を簡単に紹介しました。ここでは、さらに、どちらなのか迷うケースについて、分類してみたいと思います。

2-1. 自己都合退職に分類されるケース

・懲戒処分による免職や解雇

横領や不正、重大な違反など、労働者が何らかの問題を起こして、懲戒処分となった場合、会社側からの一方的な労働契約破棄ではあるものの、これは自己都合退職扱いとなります。ただし、理由に納得がいかないときは、そのまま受け入れるのではなく、会社に説明を求めるか、外部の専門機関に相談をしたほうがよいでしょう。

2-2. 会社都合退職に分類されるケース

パワハラやセクハラ被害による退職
・会社の移転により通勤が困難になった場合
・採用時に説明された労働条件と実際の労働条件がかけ離れていた場合
・一度に大量の社員が辞めてしまったなど、職場の雇用に大きな変動があった場合
・職場の労働環境や人間環境で、心身の不調をきたした場合

たとえ、労働者自身から退職の意思を切り出していたとしても、上記のように、原因が会社にある場合は、会社都合退職とすることが可能です。

ただし、これらのケースは黙っていると自己都合退職の扱いとなってしまいます。というのも、会社側にも労働者に会社都合退職をされてしまうと、厚生労働省から助成金を受け取ることができなくなるという事情があるからです。会社によっては、会社都合退職であるということを、なかなか認めてくれなかったり、悪質な会社では会社都合退職に関わらず、辞職届を出させて自己都合退職にしようとするケースもあるようです。このため、会社都合退職であるにも関わらず、会社から自己都合退職にしてくれと言われた場合は、毅然と断るようにしましょう。また、原因が会社にあるということを、なかなか認めてもらえないときに備えて、周囲を納得させることができる証拠を集めておくことを検討したほうがよいケースもあるかもしれません。

3. 自己都合退職と会社都合退職による失業保険受給の違い

すべての人に当てはまるわけではありませんが、会社を退職すると、労働者は失業保険を受け取ることができます。

失業保険は、失業手当や失業給付金とも言われ、次の職場が見つかるまでの間、前職の給与額に応じた金額を、生活費として受け取ることができる制度です。退職後にハローワークに行き、手続きをすることで、受給することができます。

失業保険には、受給可能期間と最大給付金額が設定されています。そして自己都合退職か会社都合退職で以下のように、内容が変わります。

3-1. 自己都合退職の場合

失業保険の給付制限があるため、最短でも受給開始日が退職をしてから3ヶ月と7日後になります。また、支給日数は90~150日、支給される最大の金額は約118万円です。さらに、退職後は国民健康保険に加入することになりますが、収入減による保険料の軽減といったものはなく、通常納付をしなくてはいけません。

3-2. 会社都合退職の場合

失業保険の給付制限がなく、最短7日後に受給開始となります。支給日数は90~330日、支給される最大の金額は約260万円です。自己都合退職と同様、退職後は国民健康保険への加入をしなくてはいけませんが、最長で2年間、保険料が軽減されます。

失業保険受給の面だけからみると、会社都合退職のほうが、自己都合退職よりも条件がよいということになるかもしれません。

ただし、失業保険の受給には、労働者自身に働く意思があり、求職活動を行っていることが条件となります。学業や結婚、休養が理由の退職では認められませんので、この点にも注意しましょう。

4. 自己都合退職と会社都合退職のそれぞれのメリット・デメリット

いったん、失業保険における自己都合退職と会社都合退職の扱いについてみてみましたが、このほかにも様々な違いがあり、それぞれにメリットとデメリットがあります。

以下、ほかの観点からも、みてみましょう。

4-1. 転職活動

自己都合退職には、転職活動において、波風を立てずに退職理由を伝えやすいというメリットがあります。自己都合退職の場合、退職をした事情は、個人によって実に様々であるため、はっきりと問題があったとわからなければ、特に追及されないことが多いからです。

しかし、一方の会社都合退職の場合は、事情はどうあれ、最終的には会社から解雇された形となります。このため、会社の倒産などといった、本人の意思ではどうしようもないものであればともかく、そうでなければ、本人に何かしらの問題があったのではないかと、あらぬ疑いをかけられてしまうことも無いとはいえません。

このように、会社都合退職では、転職活動に不利益をこうむる可能性があるというデメリットがあります。

4-2. 解雇予告手当

会社都合退職だと、失業保険の受給において、自己都合退職者よりも、手厚い対応をうけることができるというお話をしました。加えて、会社都合退職には、解雇予告手当をもらえるケースがあります。

解雇予告手当とは、退職日まで30日未満の解雇であった場合、労働者に対して、退職日までの日数に応じて、会社が支払う賃金のことです。これは、急な解雇による収入減から、労働者の生活を守るために、労働基準法で定められているものです。

自己都合退職にくらべ、会社都合退職の場合、失業保険や解雇予告手当によって、ある程度の生活の保障がされるというメリットがあるといえそうです。

5. 自己都合退職と会社都合退職、それぞれでの履歴書の書き方

退職後の転職活動においては、履歴書が必要となります。前職の退職理由が、自己都合退職か会社都合退職かで、退職理由の書き方が変わってきます。

5-1. 自己都合退職をした場合の履歴書の書き方

自己都合退職をした場合、履歴書の退職理由欄には、「一身上の理由で退職」とだけ、書けばよいとされています。これは、退職理由は人によって多種多様であるためです。ただし、転職を希望する会社側が、理由を尋ねてくることが無いとはいえません。面接時に特に自分から詳しい退職理由を述べる必要はないかもしれませんが、尋ねられた時に退職の理由によってできるだけ良い印象を持って貰えるよう、しっかりと準備しておくのが良いしょう。

なお、「自分が目指すキャリアプランの実現のため」など、退職理由をよりプラスの志望動機として述べることができるのであれば、積極的に退職理由を伝えることも、やぶさかではないかもしれません。

5-2. 会社都合退職をした場合の履歴書の書き方

会社都合退職をした場合、履歴書の退職理由欄には、「会社都合による退職」と書くことになります。この場合、転職を希望する会社からは、必ずといっていいほど、退職理由を確認されます。雇用側は、もしかしたら何らかの問題を起こして解雇されたのではないかということが知りたいのです。

倒産などの場合は仕方がありませんが、会社都合退職の場合は、採用試験に向けて、しっかりと対策を立てることをおすすめします。会社都合退職だから採用されるのが難しいわけでも実はありません。どうしてそのような状況になったのか、その理由をきちんと説明することができれば、あなたの印象を逆にプラスに変えることもあります。対策の立て方については、転職エージェントが運営しているサイトなどを、参考にするとよいでしょう。

6. 自己都合退職、会社都合退職の退職理由の伝え方

もう退職してしまう会社だから、どのようなことを言っても関係ないと思ってしまいがちですが、巡り巡って、転職活動に悪影響を及ぼすことがあれば、後々の人間関係に悪影響を及ぼすことも考えられます。

では、円満退職となるような退職理由の伝え方はどのような伝え方でしょうか?

最も適切なのは、まず直属の上司に相談の形できり出すということです。相談だけなら、もっと話しやすい同僚や友人にしたいところですが、こちらに先に相談したり話してしまうと、上司によっては、自分が軽んじられているととらえられてしまう可能性があります。それにより、最悪の場合、辞めることを思いとどまっても、働きにくいという環境になってしまうこともあるかもしれません。

さらに、上司を飛び越して、会社の人事や総務に直接退職を申し出た場合、会社側の都合を無視した行動と捉えられることが多いようです。これもまた、悪い印象を与えてしまう可能性が高いので、あまりおすすめはできません。

また、給与などの待遇に不満を募らせていたり、人間関係のトラブルがあって退職を希望する場合、もう辞めるのだからと、不平不満をぶちまけるようなことも控えましょう。本当の理由は言わず、建前の理由を用意することが賢明です。なお、建前の理由については、「自分自身の成長を目指す。」など、ポジティブな理由であることが望ましいです。これまで働かせてもらったことへの感謝の気持ちも併せて伝えるようにすると、より、好印象を与えることができるかもしれません。

7. 自己都合退職、会社都合退職を転職先に伝えるには

次に、転職を希望する会社への退職理由の伝え方を考えてみましょう。

7-1. 自己都合退職の場合

転職時の採用面接で退職の理由を聞かれたときは、前職の会社の不利益になるような理由を述べることは、できるだけ控えるようにしましょう。というのも、採用した場合、自分たちも同じように思われてしまうのではないか、という印象を与えてしまう可能性があるからです。できるだけポジティブな内容で、退職理由、転職理由を伝えることをおすすめします。

7-2. 会社都合退職の場合

労働者自身に大きな過失があった場合は別ですが、そうではない会社都合退職の場合は、ありのままの理由を伝えても、特に問題はありません。ただし、前職の会社で起きたことは他人事ではなく、組織の一員として受け止めており、自分がいたらなかった点については充分に反省している、ということを、しっかりと伝えることが大切です。その上で、これらの経験を活かして、新しい仕事に活かし積極的に取り組みたいという姿勢を示すことをおすすめします。

自己都合退職であれ、会社都合退職であれ、仕事を辞めてしまうということで、労働者は不安な気持ちになります。正式に退職してしまう前から、面接や履歴書での対策を練るなど、転職に向けての準備をしておくことで、不安感を払拭し、より前向きな気持ちで、新しいスタートをきることができるのではないでしょうか。

おわりに

同じ退職でも、自己都合退職と会社都合退職のどちらになるのかで、手続きをはじめ、様々な点で違いがあるということが、おわかりいただけたのではないでしょうか。自己都合退職と会社都合退職の違いをきちんと理解しておけば、転職活動をスムーズに進めることができるだけではなく、多少不利な退職理由でも、転職の成功へとつなげることができるかもしれません。

関連記事

あれっ?退職金がない…?転職で将来損をしないための退職金の基礎知識

LIMO編集部