新しい人を入れても入れても、元いた社員が辞めていく
そこまで大きな会社じゃないのに、休職者が数人いる
新卒1、2年目や、現場のリーダー層の離職が多い

 ただでさえ人手不足の時代に、こういった「人が逃げる」問題に悩まされている企業はとても多いだろう。

 こうした会社になってしまうのはなぜなのか? 数多の組織を見てきた「職場のメンタルヘルス・コミュニケーション対策」の第一人者であり、『人が集まる職場 人が逃げる職場』の著者・渡部卓氏に、その原因と対策を解説してもらった。

「成長感覚」を得られないと、人は逃げていく

「人が逃げる職場」には、さまざまな特徴が見られるものです。たとえば、「雑談がほとんどない」「朝イチや夕方の会議が多い」「いつも同じメンバーが残業している」……などなど、挙げだすとキリがありませんが、その根本にある問題を一言で表すと、「成長感覚」を得られないこと、と言えるでしょう。

 つまり、人が生き生きと働くためのモチベーションとなる「成長していく感覚」を職場が邪魔してしまい、それどころか「ここにいたら潰される!」というネガティブな感覚すら与えてしまっているのです。

 しかしこれは、裏を返せば、「人の成長をサポートしてくれる職場」をつくることができれば人が集まってくる、ということでもあります。

 現代は「就社」ではなく「就職」の時代といわれています。一つの会社で定年まで勤め上げることが当たり前ではなくなったいま、転職・副業・資格の取得・生涯学習などをキャリアメイクの必須事項と考える人が大半になってきました。社員のそのようなニーズを受け入れ、共感し、サポートしてくれる。そんな職場には当然、人が集まってくるでしょう。

部下の夢や目標に、どこまで踏み込むか

 会社でマネジャーの立場にいる方に一つ質問です。あなたは、自分の部下の将来の夢や目標、希望するキャリアプランを知っているでしょうか?

「いま勤めている企業での出世や収入アップが目標」という部下もいるでしょうし、中には「転職して就きたい職業や業界がある。その夢を叶えるためにひそかに準備している」という部下も当然いるでしょう。会社の中で具体的な転職時期を検討している人の比率は年々高まっているとの調査報告もあります。

 こうした部下のさまざまな夢や目標に対して、上司はどこまで踏み込むべきでしょうか。

部下から転職・独立を相談されたら?

 たとえば、「将来は独立して、フリーランスとして働きたい」という夢を持ち、仕事が終わってから、誰にも知られないように講座に通ったり、資格を取ったりしている部下がいたとします。

 その部下は、上司であるあなたのことを信頼していて、「独立するかどうか迷っている」と打ち明けてくれたとしたら、どうしますか?

 上司としては、転職・独立されるとせっかく育てた人材が抜けてしまうわけですし、部下の離職率が上がることは自分の評価にも響きかねません。当然、「辞めてもらっては困る」というのが本音でしょう。

「なぜ転職したいと思ったか」は重要

 かといって、「成功する人なんて一握りだ。やめとけ」「うちみたいに安定した会社で働いていたほうがいい」なんて脅し文句のように言うのはアウトです。それは、社員の成長にブレーキをかける行為だからです。

「成長感覚」を得る源は人それぞれ。一見、会社の仕事には関係ないようなことでさえ、毎日のモチベーションになっていることも数多くあります。そこにブレーキをかけてしまうことは、部下の心を折ったり、離職を早めたりする要因にもなりかねないのです。

 では、上司としてどう接したらよいのでしょうか?