はじめに
働く女性の妊娠がわかった時、まず頭をよぎるのは「仕事をどうするか」ということではないでしょうか。あらかじめ「子供を産んでも絶対続ける!」「子供が産まれたら辞める」など、具体的に方向を定めている人も、体調や状況によって、予定を変更せざるを得ないこともあるかもしれません。
妊娠を職場へ伝えるタイミングや、退職するとしたら辞める時期、辛いつわり期の乗り切り方など、働く妊婦さんが気になるポイントについて、まとめました。
目次
1. 妊娠したら仕事は辞めるべき?
2. 妊娠したら仕事先にはどう伝える?報告時期は?どの範囲まで話すべき?
3. 仕事を続けたい気持ちはある…妊娠したら、いつまで仕事できる?
4. 妊娠したら仕事を退職する場合…辞める時期はいつがよいの?
5. 妊娠したらしないほうが良い仕事って、どんなこと?
6. 妊娠したらお給料はどうなる?仕事をしていると貰えるお金は?
7. 妊娠中の仕事の仕方は?職場でのつわり対策は?
1. 妊娠したら仕事は辞めるべき?
妊娠はとても喜ばしいことです。しかし、働く妊婦さんの中には、喜んでばかりはいられない人もいます。というのも、「このまま仕事を続けられるかどうか」という問題に直面するからです。
今の時代、妊娠したからといって、すぐに退職を促されるということは無くなったとまではいえないようですが、かなり少なくなったのではないでしょうか。現に、多くの妊婦さんがご自身の身体と赤ちゃんと向き合いながら出産を迎え、産休、育休を経て仕事に復帰しています。必ずしも、妊娠を理由に、仕事を辞める必要はないのです。
なお、仕事を続けることを希望する場合ですが、一般的に、お医者様から絶対安静・入院等の指示がなければ、仕事を続けることはできます。しかし、妊娠をすると、妊婦さんの身体には、様々な症状が現れます。「つわりが重く栄養が取れない。」「体調が優れない。」といったことが起こり、仕事をすることが難しい状況になるかもしれません。逆に仕事の内容が、あまりにも妊婦さんの身体にとって負担が大きいものである場合は、いったん仕事をお休みするなどの対策が必要になります。特に妊娠初期は流産の可能性も高い時期ということもあり、無理は禁物。お医者様に仕事の内容を伝え、できる限り、身体に負担のかからないよう指示を仰ぎながら、仕事を続けていくことをおすすめします。
2. 妊娠したら仕事先にはどう伝える?報告時期は?どの範囲まで話すべき?
多くの人が、職場への妊娠報告は、安定期に入ってから――と考えます。しかし、それでは、最も体調が悪く、配慮が必要な妊娠初期を、職場の協力なしに乗り切ることになってしまいます。報告をしないまま仕事を続けることで、否応なしに母体に負担がかかる仕事をする羽目になったり、我慢してきつい仕事をしたことで体調を崩し、業務に支障をきたした結果、同僚に迷惑をかけてしまうということが起こってしまうかもしれません。
せめて直属の上司には、胎児の心拍確認後~つわりが始まる頃くらいの、なるべく早い時期に伝えるほうが良いでしょう。上司に報告し、理解を得ておけば、母体に負担がかからない程度に、仕事の内容や量を調整してもらうことや、満員電車での通勤を避けるための時間差出勤や退勤をお願いすることができるといったことが期待できます。
上司に妊娠報告をする際には、できるだけ、出産予定日や産休・育休の取得をどのように考えているかなども合わせて伝えることをおすすめします。こうすることで、会社側も、人員配置の調整計画が立てやすくなります。また、このとき、妊娠・出産について、会社がどのような制度を取っているかについても、あわせて確認しておくとベストです。また、上司のほかにも、仕事で深く関わったり、配慮をしてくれそうな同僚がいる場合は、そちらにも妊娠の報告をしておくのが理想的です。
なお、お互いに気持ち良く仕事をできる環境をつくっていくためにも、上司や同僚に、仕事に対する配慮をしてもらった場合は、当たり前ですが、感謝の気持ちを忘れないようにしたいものです。
3. 仕事を続けたい気持ちはある…妊娠したら、いつまで仕事できる?
妊娠後、いつまで仕事ができるかというのも、個人差があり、一概に「これ」ということはできません。
ちなみに、大きなトラブルなく働きながらの妊娠生活を過ごすことができた妊婦さんの多くは、出産予定日の6週間前(妊娠9カ月)から取得できる産前休暇まで仕事をしている場合が多いようです。ただし、この産前休暇は、本人の請求によって与えられるものとされており、労働基準法では、なんと出産の直前まで働いても良いことになっています。
妊娠後期に入ると日に日に大きくなるお腹で通勤するのも一苦労となってきます。有給休暇が余っているようであれば、少し早めに休暇に入るなど工夫をしてみてもいいかもしれません。一方、自営業や家族経営の妊婦さんになると、状況によっては直前まで仕事をしているというパターンも多そうです。
とはいえ、これらは妊娠の経過が順調で、母体へ負担をあまりかけずに仕事を続けることができた場合の話です。妊娠中は、何が起こるか分かりません。仕事内容が母体への負荷が大きいものだったり、仕事を続けることで、体調に支障をきたしてしまいそう、といった場合は、無理をせず、お医者様に相談するようにおいたほうがよいでしょう。そのうえで、自分自身の身体の状態を最優先に考えつつ、このまま続けるべきか、とりあえず休暇をとるか、思い切って退職するかなど、どこまでお仕事を続けていけるかについて、しっかりと考えていきたいものです。
4. 妊娠したら仕事を退職する場合…辞める時期はいつがよいの?
妊娠したら元々仕事を辞めるつもりであった人も、そうではない人も、いざ辞めるとなると、辞める時期をいつにしたほうがよいのかといった点について悩みますよね。
辞める時期はお仕事の内容や妊娠経過によって様々ですが、参考までに退職時期別に体験談をまとめてみました。
【妊娠初期(妊娠1〜4ヶ月)に退職】
「つわりが酷く、毎日吐いてばかりで何も口にできない状態。とても会社へ行ける体調ではなくいつまで続くかもわからなかったので、退職しました」
【妊娠中期(妊娠5〜7ヶ月)に退職】
「安定期に入ってから足の浮腫みがひどくなったり、血糖やタンパクで改善指示が出てしまいました。一日中立ちっぱなしの仕事でしたが、続けることはできず、退職して体調と生活習慣の改善に専念しました。」
【妊娠後期(妊娠8カ月以降)に退職】
「ギリギリまで続けるつもりでしたが、お腹が大きくなってきて立ち上がるのも一苦労。赤ちゃんのお腹の中での動きも激しくその痛みも感じていたため、もう難しいと思い、退職しました」
あらかじめ、辞める時期を決めている場合はその限りでありませんが、妊娠によって退職を決心した人の多くは、妊娠経過と、そのときの体調に応じて、退職時期を決めているようです。普通の仕事のようにスケジュール通りにはいかないのが妊娠というもの。ご自身のできるだけ働きたいという気持ちも大事ですが、妊娠生活においては、何よりも母体と赤ちゃんの安全が優先です。お医者様の指示を仰ぎつつ、上司や同僚と相談しながら、辞める時期を見定めていきたいものです。
5. 妊娠したらしないほうが良い仕事って、どんなこと?
妊娠したらしないほうが良い仕事には、どのようなものがあるでしょうか。
一般的には、以下のようなお仕事は配置転換を願い出るか退職を検討するなど、対策が必要となるでしょう。
【重い物を持ち上げたり、身体を過度に動かす重労働】
重い物を持つことや、お腹に負担のかかる姿勢は妊婦さんにとって大敵です。妊娠初期の不安定な時期には、流産につながる出血を引き起こす可能性もありますので、なるべく配置転換をお願いした方が良いでしょう。
【ヒールを履くことが必須など、転倒する危険の高い立ち仕事】
立ちっぱなしの接客業や飲食店などの勤務も、注意が必要です。転倒のリスクも高いですし、人とぶつかったり、熱いものがかかったりする危険もあります。
【夜勤のある仕事】
夜勤のある仕事は、健康な状態の時ならいざ知らず、妊娠生活においては、生活リズムが崩れ、自律神経に支障をきたす可能性があるとされています。また、勤務中に体調が悪くなってしまっても、時間が時間ですから、病院にかかることが難しく、この点においても、あまりおすすめできません。
【強いストレスのかかる仕事】
一般的に、人は強いストレスがかかると、血流が悪くなるといわれています。特に妊娠中においては、血流が悪くなることで、赤ちゃんに十分な栄養が届かなくなってしまう可能性もあるため、あまりおすすめできません。赤ちゃんにとっては、お母さんがリラックスしていることが何よりの栄養ですから、上手くストレスを散らす対策を取るか、仕事自体を見直してみた方が良いかもしれません。
なお、これらはあくまで一般的な意見です。仕事が妊娠生活に与える影響の度合いには、個人差があります。上記以外の仕事でも、続けてよいのかどうかを迷ったときは、お医者様の指示を仰ぎ、判断するようにしてくださいね。
6. 妊娠したらお給料はどうなる?仕事をしていると貰えるお金は?
働く妊婦さんにとって、自分が働くことができない期間の収入減は死活問題。しかしご安心ください。妊娠・出産によって、もらうことができるお金があります。
なお、これらは申請しないと支給されないお金です。忘れずに手続きをしておきましょう。
【出産手当金】
妊娠・出産で仕事を休み、その期間に給料が支給されない場合に健康保険から支払われるお金です。対象となる期間は、産前42日間と産後56日間。給料のおよそ3分の2の金額×休んだ日数が支給金額となります。こちらは、勤務先の健康保険組合に申請します。
【出産育児一時金】
分娩及びその入院費用に対して、健康保険から支払われるお金です。子供1人につき42万円が支給されます。(産科医療補償制度に加入していない医療機関で分娩する場合や、在胎週数が22週未満の出産の場合は40.4万円となります。)分娩先の医療期間が「直接支払制度」を採用している場合は、医療機関で渡される書類に必要事項を記入して提出することで、退院時に42万円を差し引いた金額を支払うだけで済みます。「受取代理制度」の場合は一旦医療機関に分娩費用を全額支払った上で、退院後に加入している健康保険組合に必要書類を提出し、支給を受けます。
【育児休業給付金】
育児のために休職している間の生活保障として雇用保険から支給されるお金です。育休開始日から180日目までは月給の67%が、181日目〜育休最終日までは月給の50%が支給されます。こちらは、勤務先の会社を通じて申請を行います。
この他、妊娠中に休職した場合、傷病手当金の対象となることがあります。また、会社独自のお祝い金制度を設けている場合もありますので、妊娠を報告する際に、会社にどのような制度があるのか、ついでに確認してみるのが良いでしょう。
7. 妊娠中の仕事の仕方は?職場でのつわり対策は?
妊娠したら、多くの妊婦さんが経験するつわり。人によっては、仕事どころではなくなってしまうほど、かなりつらい症状を伴うものですが、妊娠初期はまだ周りにも公表していないというケースが多く、「怠けていると思われたらどうしよう。」と心配になる方も多いと聞きます。仕事中のつわりの乗り切り方をご紹介します。
【においづわり】
満員電車の人の充満したニオイがダメ!という妊婦さんは多いようです。その場合には、時差通勤や各駅停車など人の少ない電車に乗るようにしたりするのがおすすめ。電車でも職場でも、一日中マスクを着けて対策するという妊婦さんも多いようです。
【食べづわり】
空腹になると吐き気に襲われるのが食べづわり。許される環境であるならば、常に腹持ちの良い、軽くつまめるお菓子などをデスクに入れておき、こまめに食べることで、空腹にならないようにするのがおすすめ。仕事中は、飲み物以外NGという職場であれば、一時的にお腹が膨れた感じになるという理由から、炭酸水の常備がおすすめ。飲むことでさっぱりしますし、ノンカロリーなので、体重増加につながりにくいという点でも、ポイントが高いです。
【吐きづわり】
ずっと船酔いしているような吐きづわり。対策が難しいですが、疲労がたまると余計に気持ち悪くなるので、こまめに休憩を取るなど工夫をしてみましょう。
【眠りづわり】
何をしても眠い、寝ても寝ても眠い、眠りづわり。仕事中はさすがに我慢が必要ですが、家に帰ったら、家事は後回しにして朝はなるべく長く寝る、会社では、昼休みの休憩時間も眠るようにするなど、睡眠時間をこまめに確保することで乗り切ったという妊婦さんが多いようです。
一般的には、つわりは安定期になると落ち着いてくると言われていますが、長い人は、中期・後期まで続きます。症状も個人差が大きいので、辛い時は無理をせず、いったん休んで、お医者様の指示を仰くようにしましょう。
おわりに
妊娠したら、嬉しい反面、「仕事は続けられるかしら?」「業務に支障をきたさないようにするには、どうしたらよいかしら?」などなど、心配になる妊婦さんは多いようです。そんな時にお役に立てる情報をまとめました。ほどよく周りの人に頼り、無理をしない工夫をすることで、妊娠と仕事を両立させることは不可能ではありません。とはいえ、母体が第一ですので、体調に常に注意を払いながら、充実した妊娠生活を送ってくださいね。
LIMO編集部