退職後に地方都市への移住を考えるならどこがいいのか?

「物価」「総人口」「人口密度」から考える

日本版の退職者コミュニティ構想とは

前回の記事では、退職後の3大経費として食費、税金・社会保険料、医療費をあげ、それぞれの水準を引き下げることを検討してみた。その結果、どれも個別に削減することの難しさが見えてきたため、包括的なコストダウンとして、米国のようなリタイアメント・コミュニティへの移住も選択肢にあがることを紹介した。

日本でも「日本版CCRC」と呼ばれる構想がスタートしている。CCRCとはContinuing Care Retirement Communityの略で、継続的なケアを前提にした退職者のコミュニティを指している。

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2015年には内閣府の「まち・ひと・しごと創生本部」のもとに日本版CCRC構想会議が設けられ、その年の12月11日には「生涯活躍のまち構想」も発表されている。ただ、まだ注目される動きが出ているわけではない。

地方「都市」移住

過去、退職後の移住先として話題になったのは海外だが、終の棲家として考えると必ずしも一般的な選択肢ではない。同じような移住先が日本にあれば、何も海外に向かう必要もなく、国内での地方移住が大きな選択肢になるはずだ。

地方移住と聞くと、多くの人が「山辺の一軒家を買って」とか、「ログハウスを建てて」といったことを想像しがちだが、地方の都市に移住することも退職後の生活費総額を引き下げる効果がある。ここでは、以下の3つの条件から候補となり得る都市を見てみよう。

①消費者物価の安い地方都市

政府が発表する消費者物価地域差指数は、都道府県庁の所在する都市の物価を相対的に見る指数である。それによると、家賃を除く総合指数が東京23区内よりも高いのは相模原市、横浜市、川崎市だけだ。

逆に最も低かったのは奈良市で、東京23区を100とすると93.7になる。物価の安い方から20番目は富山市で96.6。物価指数で東京23区に比べて3.4%以上低い都市が、地方の県庁所在地では20都市ある。

②大きすぎない都市

退職後の生活で手軽に利用できる範囲内に必要なサービスが揃うためには都市は大き過ぎないほうがよく、その一方で小さ過ぎて娯楽や文化施設が整わないという課題のない規模も必要なため、人口50万人程度を想定する。また、近隣にある大都市に生活必需ファシリティの一部を依存していないことも大切だ。

③コンパクトな都市

退職後の生活に利用できる範囲はそれほど広くないことから、都市がコンパクトである必要性も高い。その指標として人口密度で1平方キロメートルあたり1000人以上の都市を探す。

こうして、物価、総人口、人口密度の3つの条件で絞りこんだ都市は、前橋市、岐阜市、奈良市、松山市、鹿児島市の5つになる。

日本でも米国並みに「リタイアメント・コミュニティ」が広がり、退職後の生活のコストダウンが図れるような施策が求められる時代になっている。

消費者物価、人口、人口密度から見た移住候補地方都市

【出所】物価指数:消費者物価地域差指数(総務省)、人口:住民基本台帳、面積:全国都道府県市町村別面積(国土地理院)。これらをもとにフィデリティ退職・投資教育研究所作成

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フィデリティ退職・投資教育研究所 所長 野尻 哲史

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野尻 哲史
  • 野尻 哲史
  • フィデリティ退職・投資教育研究所
  • 所長

国内外の証券会社調査部を経て、2007年より現職。アンケート調査をもとに個人投資家の資産運用に関するアドバイスや、投資教育に関する行動経済学の観点からの意見を多く発表している。
日本証券アナリスト協会検定会員、証券経済学会・生活経済学会・日本FP学会・行動経済学会会員。
著書には、『老後難民 50代夫婦の生き残り術』、『日本人の4割が老後準備資金0円』(講談社+α新書)や『貯蓄ゼロから始める安心投資で安定生活』(明治書院)などがある。
調査分析などは専用のHP、資産運用NAVIを参照