4. 夫が受け取れる遺族年金はいくら?

妻がフルタイムで働いていた場合、亡くなった際に夫が受け取れる年金は「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」です。

子どもがいるシングルファザーは両方を受給できますが、子どもがいない場合、夫が受給できるのは遺族厚生年金のみとなります。

それぞれの受給額をシミュレーションしてみましょう。

4.1 ケース1:子どもがいない場合

子どもがいない場合、夫が受給できるのは遺族厚生年金のみで、妻の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の金額を受け取れます。

なお、子どもがいても「18歳到達年度の3月31日までにある子(障害1級・2級の場合は20歳未満)」に該当しない場合は、子どもがいない場合が適用されます。

わかりやすくいうと、原則として子どもが高校を卒業してしまうと受給できないということです。

では、以下の条件で具体的にシミュレーションしてみましょう。

  • 妻の平均標準報酬額:25万円
  • 厚生年金加入期間:25年
  • 夫:55歳以上

報酬比例部分=平均標準報酬額×5.481/1000×平成15年4月以降の加入期間月数

上記の計算式より、報酬比例部分=25万円×5.481/1000×300月(30年)となり、約41万1000円と計算できます。

この金額の4分の3なので、約30万8000円が受給金額となります。ただし、受給開始年齢は60歳からです。

4.2 ケース2:子どもがいる場合

子どもがいる場合には、上記遺族厚生年金のほかに条件を満たせば遺族基礎年金も受給できます。

遺族年金としていくら受け取れるのか、以下の条件でシミュレーションしてみましょう。

【シミュレーション条件】

  • 子ども:1人(受給条件を満たしている)
  • 妻の平均標準報酬額:25万円
  • 厚生年金加入期間:25年
  • 夫:55歳以上

遺族基礎年金は、「81万6000円+子の加算額」で計算します(令和6年度)。子の加算額は23万4800円なので、以下のようになります。

遺族基礎年金額:81万6000円+23万4800円=105万800円

したがって、遺族基礎年金が105万800円、ケース1より遺族厚生年金が約30万8000円なので、合計で135万8800円が受給金額となります。

5. まとめにかえて

遺族年金は、公的年金制度に加入していた方が亡くなった際に、その方に生計を維持されていた遺族が受け取れるものです。そのため、フルタイムで共働きの妻が亡くなった場合も、夫は遺族年金を受給することが可能です。

しかし、受給するには一定の条件を満たしている必要があるため、万が一のときに備えて支給条件を確認しておくと良いでしょう。特に、子どもの有無によって支給される年金の種類や金額が異なる点に注意しましょう。

参考資料

木内 菜穂子