冒頭でも説明したように、居住価値は「住み心地」と言い換えることができます。では、具体的にどのようなものが居住価値に該当するのでしょうか?

間取り・広さ

まずは一番わかりやすい部屋の広さについてです。これは家族形態によって、どの広さが最適であるかが変わってきます。

ファミリーであれば、子供の人数によって幅があるものの、一般的には3LDKを基準に探す方が多いです。実際、販売されている物件も3LDKが一番多いのではないかと思います。

また、面積の基準としては可変性があり、将来間取り変更もしやすい70㎡以上のものが人気を集めます。

DINKSの場合、大半の方が2LDKの間取りを基準にしますが、面積の希望は幅広く45㎡~65㎡の間が人気です。中には、80㎡以上の面積を求める方もいます。

単身の方は間取りタイプが1DK~1LDK、面積としては30~45㎡の間を希望される方が多いです。

お部屋の面積によって住宅ローン減税・控除の適応可否が決まってくるので、借入をする方は注意が必要です。特にDINKSの方が希望することの多い50㎡前後の場合、確認すべき点があります。

住宅ローン減税には、「床面積50㎡以上」という規定があります。一般的に販売に使われる「専有面積」は「壁芯面積」といって「隣接住戸との壁の真ん中」を基準に面積を計算していますが、住宅ローン減税で求められる面積は「登記面積(内法面積)」といい、「壁の内側」から測ったものになります。

そのため、専有面積が50㎡前半だと登記面積では50㎡を下回っているケースが多々あります。これは仲介会社に聞くとすぐにわかりますので、必ず確認してくださいね。

教育環境

ファミリー層では子供を良い学校に通わせたという方が多いため、名門と言われる公立小学校の学区内はとても人気があり、居住価値も高くなります。教育環境の良さは資産価値のひとつである立地とも連動しているため、ファミリーの方は注目すべきポイントです。

子供に通わせたい小学校の学区がマンションの住所と違う場合は、越境通学をすることになります。人気の小学校の場合、応募の生徒数が小学校の定員数を超えてしまい、目当ての小学校に通えるかどうかが抽選で決まることになります。もし抽選に外れた場合、他の小学校に通わせる必要があり、小学校によっては通学路の道のりがとても長くなります。そうならない為にも、もし特定の小学校を狙っているのであれば、小学校の学区内で家を検討した方が良いでしょう。

また、共働き世帯の方が居住価値として意識することが多いのは地域の「待機児童」の数です。待機児童が多く、保育園の確保が困難なエリアはどうしても居住価値が下がってしまいます。そのため、物件を探す際にはこの「待機児童数」についても必ず確認を取ってください。

また最寄りの保育園の住所も要確認です。マンションに近い保育園だとしても行政区(区や市)が違う場合、保育園の審査ハードルが高くなり、入園出来ないこともありえます。そうすると、遠い保育園まで子供を毎朝届ける必要があり、居住性が落ちてしまうことになります。

ペットの飼育

中古マンション選びとペットペット飼育可能のマンションは最近増えてきていますが、これも居住価値を高くする1つの要素です。マンションごとに飼育規約があり、頭数制限・サイズ制限・種類制限、予防接種証明や写真の提出など様々な制限があるので、ペット飼育中あるいは飼育予定の方は、管理規約の中の飼育規約を必ず確認してください。

また、日中不在にしがちな方はしつけについても注意が必要です。インターフォンが鳴った際や、管理人が廊下の清掃にきた際、また隣接住戸からの物音などで鳴き声をあげてしまうとマンション全体の問題になりかねません。

自己所有のマンションといえども、「共同住宅」になるので、近隣の方への配慮は最大限に行いましょう。

リノベーションのしやすさ

古くてもリノベーションしてある部屋や、リノベーションがしやすい部屋は居住価値が高くなります。将来家族形態が変化した際、間取りを変更したり、介護がしやすいよう廊下や開口を広くすることができるからです。

ただ、施工技術が数年前より格段にレベルアップしているとはいえ、リノベーションでも不可能なこともあるので注意してください。

マンションの構造から考えると、「壁式構造」より「ラーメン構造」のマンションの方がリノベーションしやすい傾向です。壁式工法は仕切り壁が構造躯体になっており、間取り変更がとても困難です。

また大幅な間取りの変更(特に水回りの位置)には床の高さを上げる必要性があり、現時点の天井高や共用排水管の位置によっては変更ができない、あるいは莫大な費用がかかるケースもあります。

その他にもマンションによっては「フローリングへの変更禁止」「追炊き機能付き給湯器への変更禁止」などオリジナルルールも存在するので管理規約における「リフォーム・リノベーションに対する規則」の事前確認が必要です。

共用施設の充実度

最近のマンションには様々な共有施設がついているものがあります。駐車場やオートロック、宅配BOXはもちろんのこと、コンシェルジュサービス、キッズルーム、ゲストルーム、ミニコンビニ、スパ、トレーニングルーム、レンタルサイクル、カーシェアリングなどがついているマンションもあります。

施設の充実は居住価値を大きく向上させる反面、維持管理にはお金がかかります。管理のための費用はもちろんそのマンションの所有者が負担します。「これだけの施設があってこの管理費ならよし!」と、住み始めて数十年、施設が老朽化した際に入れ替え費用がかかってくる可能性もあるのでその点も念頭に置いておきましょう。

眺望

窓から見える絶景!これも居住価値として高いというのはその通りなのですが「用途地域」の指定があるエリアでは注意が必要です。「用途地域」とは、都市計画法の一種で、「土地・建物の用途を制限する」法律です。

この用途地域は12種類あり、大きく分けると「住居系」「商業系」「工業系」の3つに分類できます。これにより土地に対して建築できる建物の大きさや高さも変わってくるので、窓から見える景色が変わってくる可能性があります。

例えば、現在マンションの目の前が駐車場やゴルフ練習場、ガソリンスタンドなど見晴らしの良い施設であっても、検討中のマンションとそのような施設が同じ用途地域の場合は将来的に同規模の建物、場合によってはそれ以上の規模の建物が新たに建築される可能性があります。

具体例として、勝どきの例を見てみます。東京都の用途地域を調べて見ると、勝どきエリアは工業系の用途地域が多くなっています。

ご覧頂けるように、数多くの開発計画が予定されており、お部屋によっては眺望が遮られる可能性があります。用途地域に関しては各市区町村のホームページで調べることができますので、参考にしてみて下さい。

夜景は家族の団欒に大きな影響を与えるので、中古マンション選びの際は重視してみてください。

>> 東京の用途地域を調べて見る

日当たり

眺望と同じく、日当たりの良さも居住価値に直結します。ただ、日当たり=部屋の向きというわけではありません。バルコニーの向き、主要採光面は必ず南!という方が多いのは事実ですが、必ずしも南向きの部屋の居住価値が高いわけではありません。

南向きでも目の前に建物があって日当たりや眺望が阻害される、幹線道路や線路があって音が気になる、河川や工場、畑、運動場があり粉塵や臭気が気になるなどの理由で、同じマンション内でも南向きより東や北向きの部屋の方が人気の物件もあります。特にタワーマンションの北向きは生活がしやすく人気があります。向きだけで判断せず、周りにどんな施設があるかも併せて確認すると安心です。

ゴミ捨ての時間

マンションによってゴミを捨てられる時間は違います。「曜日指定」のマンションもあれば、「24時間いつでも」ゴミを捨てられるマンションもあります。夫婦共に朝早く家を出る必要があったり、忙しくてなかなかゴミ捨てが出来ない場合は、24時間ゴミ捨てが出来るマンションを選んだ方が良いでしょう。

一方、24時間ゴミ捨てが可能なマンションは、管理人がゴミ捨て場の管理をしっかりする必要がありますので、ゴミ捨てが曜日指定のマンションより管理費は少し高くなります。

タワーマンションなどでは各階にゴミ捨て場があるマンションもあります。また部屋にディスポーザーが付いていれば、生ゴミを捨てる必要がなくなり、より居住価値はアップするでしょう。

スーパーの営業時間

マンションの近くにスーパーがあると、ちょっとした買い物に便利です。特にあると便利なのが夜の23〜24時までやっている、大手スーパーやマイバスケット、マルエツプチなどのスーパー。仕事で遅くなった時も、仕事帰りに寄れるスーパーがあると、住み心地は格段にアップします。営業を遅くまでやっているスーパーは貴重な存在です。

洗濯物のルール

秀和レジデンスなどのヴィンテージマンションや、高級タワーマンションの場合、バルコニーで洗濯物を干すのが禁止されているマンションが数多くあります。その場合、マンションの屋上で干すか、浴室乾燥機、ドラム式乾燥機などで洗濯物を乾かすことになります。

乾燥機は一般的になってきたので、気にならないのであれば全く問題ない洗濯物のルールですが、是が非でもお日様の光で洗濯物を乾かしたい!という方は居住性を保つ為にも管理規約で洗濯物のルールを確認しておいた方が良いでしょう。

マンションのコミュニティ

マンションは「複数人が一つの建物で生活する」という特性上、マンションにとって程度の差はあれど、マンションのコミュニティと関わりを持つことになります。高級マンションによっては、ものすごいママコミュニティが出来ている場合もあります。売主さんや不動産会社にヒアリングするなどして、どんな方が住んでいるかは確認しておいた方が良いでしょう。

定期イベントや騒音

人間が生活を営む街で生活する以上、全く音がしない環境で生活することは不可能です。また音の感じ方は人によって大きく異なり、どこからを騒音とするかは、非常にデリケートな問題です。

居住性を確認する、という視点では、何かマンションの近くで定期イベントが開かれていないかは確認した方が良いでしょう。縁日のような比較的小規模なものから、野外フェス・野外ライブのような大きな音が出るものもあります。そのイベントが、ご自身の感性と合うか、距離が近すぎないかの確認が重要です。

実家との距離感

実家の近くで家を購入する場合、実家との距離感は重要なポイントです。特に子育てのタイミングでは、実家が近いと非常に助かることでしょう。将来親の介護をする際も、なるべく実家に近い方が楽です。一方、実家の近くで購入したは良いものの、意外なほど親が子育てを手伝ってくれないケースもあります。実家の近くで家を買う場合は、あらかじめ期待値は親と擦り合わせておいた方が良いでしょう。

資産価値とは