2. 繰下げ受給をすると年金額を増やせる
厚生年金は原則として65歳から受給開始するものですが、66歳から75歳の間に繰下げて受給開始することができます。
1ヵ月繰下げるごとに0.7%増額され、75歳まで繰下げると最大84%も増額されます。
2.1 1年繰下げると約18万円増額できる
年額約219万7000円の年金を繰り下げるとどれくらい増えるのか、下表にまとめました。
1年間繰下げるごとに約18万5000円増額でき、70歳まで5年間繰下げると約92万円も増額することが可能です。
厚生年金受給額を増やしたい場合、繰下げ受給を利用するのもひとつの方法です。
2.2 繰下げ受給の注意点
繰下げ受給をする場合には、以下の点に注意が必要です。
【年金受給総額が減る可能性がある】
年金受給開始年齢を繰り下げると、寿命次第では原則通り65歳から開始した場合よりも、受給総額が少なくなる可能性があります。繰下げ年齢を高齢にするほど増額率は大きくなりますが、受取期間が短くなることもあり得ます。
もちろん、寿命のことは誰にもわかりませんが、このようなリスクがあることは理解しておきましょう。
【社会保険料や税金が増える可能性がある】
厚生年金からは、原則として国民健康保険などの社会保険料や所得税・住民税が天引きされます。年金所得が多くなるほど、社会保険料の負担が大きくなり税金も高い税率がかかります。
年金受給額が増えても、その分社会保険料や税金が多く差し引かれると、思っていたよりも増額されないということも考えられます。
【加給年金は受け取れない】
厚生年金を繰下げている間は、加給年金は支給されません。加給年金とは、厚生年金保険に20年以上加入していた方が、65歳到達時点で生計を維持している配偶者や子ども(※)がいるときに加算されるものです。
※配偶者:65歳未満、子ども:18歳到達年度の末日までの子ども(障害を持っている場合は20歳未満)
配偶者と第1子・第2子は各23万4800円、第3子以降は各7万8300円を受給できます。
加給年金を受け取れる条件に該当する配偶者や子どもがいる場合は、繰下げ受給をするかどうか慎重に考える必要があります。
3. まとめにかえて
将来受け取れる厚生年金額は今回ご紹介した計算式で求められますが、計算が複雑でわかりにくい場合は、ねんきん定期便でも確認できます。
これまでの保険料納付実績に応じた受取額が記載されています。ただし、正確な金額ではないため目安のひとつとして参考にしましょう。
また、年金受給額を増額したいときは繰下げ受給という方法がありますが、注意点もあるため利用するかどうか十分に検討するようにしましょう。
参考資料
木内 菜穂子