3. 姉が妹に対して抱いた「人生を後悔するほどの不公平感」
葬儀がひと段落したところで、妹のB美さんが遺産分割についてこう言ったのです。
「お父さんとお母さんの遺産は法律通り、姉妹で半分ずつ分けることで問題ないよね!この家と土地は売る?もし売らないでお姉ちゃんが住み続けるようなら、預貯金は全部私がもらうことになるね」
A子さんは納得がいきません。
「私は跡取りとしてお見合い結婚をして、農作業を手伝って、介護まで10年間した。それなのになんで、遺産はあなたと半分ずつに分けなればいけないの!あなたは好き勝手生きてきたじゃない!私が遺産をすべてもらって当然だわ!」
と主張をしました。
そして、A子さんとB美さんの2人は自分の主張を曲げず、家庭裁判所の調停にまでもつれ込みました。調停の結果、基本的には法定相続分通り2分の1ずつで分け、A子さんにはわずかな寄与分を認めるという結果になったということです。
A子さんは寄与分の少なさに驚くとともに、家のために今まで尽くしてきた自分の人生を悔やむようになり、妹のB美さんとも、その後一切連絡をとっていないとのことです。
4. 遺産相続で揉めないためには、親に生前対策を行ってもらうことが大切
A子さんと妹のB美さんが介護と遺産相続で揉めないためには、両親が健在のうちに、遺言書を作成したり、生命保険を活用したりするなど、生前対策を行う必要がありました。
遺言書の効力は法定相続分よりも強いため、遺言書でA子さんに多くの遺産を遺すと書いてもらっていれば、A子さんはB美さんよりも多くの遺産を手にすることができました。
また、生命保険は受取人固有の財産であり、遺産分割の対象ではありません。死亡保険金受取人をA子さんにした生命保険に加入してもらっていれば、A子さんの受け取る遺産額はB美さんよりも多くなったことでしょう。
5. まとめ
親に行っている介護という行為を、遺産という形に結びつけるためには、親と相続についてきちんと話し合い、遺言書を作成するなどの生前対策を行う必要があります。
A子さんの二の舞にならないためにも、兄弟姉妹の道徳感情や、寄与分をあてにすることなく、「親が元気なうちに」行動を起こしておくことが大切であると言えるでしょう。
参考資料
佐橋 ちひろ