来たる2025年は、団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者となる年。働き盛りの世代の中には、親の介護が自分ごととなっている人も多いでしょう。

「私は親の介護をしているから、相続では他の兄弟姉妹よりも多くの遺産をもらえて当然だろう」こう考えている人もいるのでは?

でも、「介護をしているから、遺産を多くもらえる」ということは、相続制度を定める民法で定められていることではないのです。

今回は、多くの家庭の相続に関わった経験を持つ相続診断士さんから聞いた、「介護への貢献をめぐる相続トラブル例」をまじえながら、生前対策の大切さについて考えていきます。

1. 「親を介護した人が多くの遺産をもらえる」という法律はない

現在の相続制度を定めている民法には、「親を介護した人が多くの遺産をもらえる」という記載はありません。

むしろ民法900条4項には「子が数人いるときは、各自の相続分は、相等しいものとする」と記載されています。

親の介護をしていても、していなくても、遺産を相続できる割合は法律上同じなのです。

1.1 民法には「寄与分」という制度がある

民法904条2項には、「寄与分」という制度が定められています。

寄与分は、亡くなった親の家業を無給で手伝っていた、療養介護を献身的に続けていたなど、「特別な寄与」をした相続人に認められるもので、認められた分だけ多くの財産を相続できるという制度です。

1.2 寄与分を認めてもらうことは難しく、金額も少額

寄与分を認めてもらうには、家庭裁判所に認めてもらう必要があります。

また、条件として寄与行為が、親族として通常期待される程度を超えている必要があります。

具体的には「仕事をやめて親の家業を無償で手伝った」など、かなりの寄与を行う必要があります。寄与分を家庭裁判所に認めてもらうハードルは高いといえるでしょう。

また、家庭裁判所から認められたとしても、期待するほどの金額を寄与分としてもらえることは難しいのが現実です。