厚生労働省の最新データ「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、国民年金の平均月額は5万6316円、厚生年金の平均月額は14万3973円です。

長い老後生活を送るうえで年金は貴重な収入源となりますが、現役時代の収入と実際に受け取れる年金額を比較すると、老後に不安を覚える人も少なくないでしょう。

現代の日本で老後に安泰な生活を送るためには、ある程度の貯蓄が必要となります。

日本の老齢年金の受給開始年齢は原則65歳ですが、年金の受給開始の年代となる「60歳代」の貯蓄はどのくらいが平均なのでしょうか。

また、60歳を過ぎると「手取り収入からいくら貯蓄に回すものか」わからないという方も少なくありません。

本記事では、60歳代の夫婦世帯・単身世帯それぞれの平均貯蓄額及び貯蓄割合について紹介していきます。

収入から貯蓄に回す割合についても紹介しているので、あわせて参考にしてください。

1. 60歳代の平均貯蓄額はいくら?

金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」によると、60歳代の平均貯蓄額は二人以上世帯(以下、夫婦世帯)・単身世帯それぞれで下記のようになりました。

出所:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」の各調査結果をもとに筆者作成

【60歳代 二人以上世帯】

  • 平均値:1819万円
  • 中央値:700万円


【60歳代 単身世帯】

  • 平均値:1388万円
  • 中央値:300万円


平均値は、大きい金額がある場合に値がその金額に偏る傾向にあるため、一般的な貯蓄額の実態を知りたい方は中央値を参考にすることをおすすめします。

60歳代の夫婦世帯・単身世帯の貯蓄中央値をみると、それぞれ700万円・300万円となっており、1000万円に到達していないことがわかります。

数年前に「老後2000万円問題」が多くのメディアに取り上げられ、一時は老後資金に関する問題が話題となったことから、老後に対する資金の意識が強まりました。

しかし実際は、中央値・平均値において、どの世帯においても2000万円に到達できておらず「老後までに十分な資金を貯められている人は多くない」ということがわかります。

では、60歳代で貯蓄2000万円以上を貯蓄できている世帯はどのくらいいるのでしょうか。

夫婦世帯・単身世帯別に貯蓄割合を見ていきましょう。

2. 【夫婦世帯】60歳代の貯蓄割合

金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査」によると、60歳代・夫婦世帯の貯蓄割合は下記のとおりです。

  • 金融資産非保有     :20.8%
  • 100万円未満     :6.1%
  • 100~200万円未満  :5.5%
  • 200~300万円未満  :3.3%
  • 300~400万円未満  :3.2%
  • 400~500万円未満  :3.4%
  • 500~700万円未満  :5.3%
  • 700~1000万円未満  :6.1%
  • 1000~1500万円未満:8.6%
  • 1500~2000万円未満:5.7%
  • 2000~3000万円未満:8.8%
  • 3000万円以上     :20.3%


60歳代夫婦世帯で、貯蓄2000万円以上を達成している割合は29.1%となっています。

約3世帯に1世帯が達成できている一方で、約7割の世帯が貯蓄2000万円に到達できていないのが現状です。

さらに、貯蓄ゼロである「金融資産非保有」の割合は全体の20.8%であり、約5世帯に1世帯が老後の貯蓄が全くできていないとうかがえます。

2.1 【単身世帯】60歳代の貯蓄割合

金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査」によると60歳代・単身世帯の貯蓄割合は下記のとおりです。

  • 金融資産非保有    :28.5%
  • 100万円未満      :8.0%
  • 100万~200万円未満  :5.7%
  • 200万~300万円未満  :4.3%
  • 300万~400万円未満  :3.6%
  • 400万~500万円未満  :2.7%
  • 500万~700万円未満  :6.2%
  • 700万~1000万円未満 :4.6%
  • 1000万~1500万円未満:6.6%
  • 1500万~2000万円未満:3.6%
  • 2000万~3000万円未満:6.8%
  • 3000万円以上      :16.9%


60歳代単身世帯で、貯蓄2000万円以上を達成している割合は23.7%となっており、夫婦世帯よりも達成割合が低い傾向にあります。

これは、夫婦世帯よりも単身世帯のほうが収入が限られているため、貯蓄額を積み立てにくく、賃貸に住んでいるケースが多いことも、2000万円以上の達成割合が低い要因になっているとうかがえます。

また、金融資産非保有の割合が全体の28.5%となっており、「貯蓄2000万円を達成している人」よりも「貯蓄ゼロの人」のほうが多くなっています。

夫婦世帯・単身世帯ともに、貯蓄2000万円以上を保有している割合と、金融資産非保有割合が類似していることから、老後準備ができている人とできていない人で二極化しているといえるでしょう。