4. 経済的な負担が少ない「介護保険施設」がおすすめ
相談者のケースのように「要介護3で認知症がある」「年金がひと月6万円だけ」という方には、公的施設のなかでも「介護保険施設」への入居をおすすめします。
介護保険施設とは、介護保険サービスで利用できる特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院の3施設を指します。
介護保険施設は、認知症の方も入所可能です。また、入所時に前払いする「入居一時金」が必要なく、入所者が負担する費用は、毎月の利用料のみです。おむつ代も利用料に含まれているので、経済的な負担が少なく、民間施設よりも安い費用で利用できます。
さらに、介護保険施設では、住民税非課税世帯など所得の少ない方に対するさまざまな負担軽減制度が用意されているので、費用面に不安がある方でも入所しやすいという利点があります。
5. 介護保険施設3施設の特徴
次に、3つの介護保険施設の特徴を紹介していきます。合わせてメリット・デメリットも見ていきましょう。
5.1 特別養護老人ホーム(特養)
寝たきりや認知症で日常生活の介助が必要な65歳以上(原則、要介護3以上)が対象。24時間体制で介護サービスが受けられる。
特別養護老人ホームのメリット
- 入居一時金が不要で、月額費用が安く抑えられる
- 「終の棲家」として終身利用が可能
- 低所得者に対する負担軽減制度が利用できる
特別養護老人ホームのデメリット
- 入居希望者が多いため、待機期間が数年に及ぶこともある
- 医療依存度の高い人は入居を断られる場合がある
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家族と同居する人は入所の優先度が低い傾向がある(一人暮らしが優先)
5.2 介護老人保健施設(老健)
病院の退院後など、在宅復帰を目指す65歳以上(要介護1以上)が対象。リハビリや医療ケアが受けられる。
介護老人保健施設のメリット
- 在宅復帰を目指してリハビリや医療ケアが受けられる
- 要介護1から入所可能
- 低所得者に対する負担軽減制度が利用できる
介護老人保健施設のデメリット
- 入居期間が限定される
- 生活支援サービスやレクリエーションが少ない
5.3 介護医療院
長期療養が必要な65歳以上(要介護1以上)が対象。医療と介護の両方のサービスが受けられる。
介護医療院のメリット
- 手厚い医療ケアが受けられる
- リハビリが充実している
- ターミナルケアに対応している
- 低所得者に対する負担軽減制度が利用できる
介護医療院のデメリット
- 費用が高め
- 個室が少ない
- 施設の数が少ない
6. 入居の申し込みはお早めに
ここまでにご紹介した3つの介護保険施設のなかでも、とくに「特別養護老人ホーム」は、入居希望者が多く、自宅での生活が困難になったタイミングで申し込みをしてもすぐに入れないのが実情です。
厚生労働省によると2022年4月時点で、特別養護老人ホームの入所を待つ人は、全国で約25万3000人いると報告されています。(※申込者のうち、要介護3以上の人)
また、特養の平均待機期間は2〜3年とも言われています。
そのため、特別養護老人ホームを入居先の第一希望とするのであれば、早めに申込むことをおすすめします。
また、民間施設であっても、評判の施設は満室で入れないという場合も少なくないため、施設入居については、できるだけ早く検討を始めましょう。
高齢の親がいる方は、この年末年始に親子・きょうだいで集まった際に、一度話し合ってみてはいかがでしょうか?
参考資料
中谷 ミホ