まず注目したいのが国立大学の授業料です。さすがに私立大学より安いものの、一昔前のような“格安感”はなくなりました。これは、国の財政難を受けて財務省(以前は大蔵省)が値上げに踏み切ったと言われていますが、単純な上昇率だけを見れば、私立大学を上回っています。
国立大学に入れば経済的負担が小さいというのは、現在では私立大学との比較相対的な話のようです。
国立大学の授業料は2005年度から11年間据え置き
国立大学でもう一つ注目したいのが、近年の授業料が据え置きになっていることです。
2005年度から国立大学法人化制度が始まり、各国立大学が、国の定める標準額を基準にして自由に決定することができるようになりました。したがって、現在の53万5千円は国が定めた標準額なのですが、実際にはほとんどの国立大学がこの標準額を授業料にしているようです。
私立大学は国立大学の授業料値上げを待ち望む?
また、国立大学の授業料据え置きは、私立大学にも少なからず影響を与えていると見られます。
2005年度に始まった国立大学法人化まで、国立大学の授業料値上げは“国私間の格差縮小”となって、私立大学側に追い風だったと考えられます。
しかし、その2005年度以降は、私立大学の値上げペースもかなり緩やかになりました。少子化等で厳しい経営環境が続く中(参考:『深刻さ増す私立大経営〜4年制の約4割、短大の約6割が“営業赤字”』)、“本当はもっと値上げしたいけど、あまり値上げできない”という苦悩を見て取ることができます。
国立大学の授業料据え置きが私立大学の経営を圧迫している一因となっており、私立大学は国立大学の授業料値上げを待ち望んでいると見るのは、うがった見方でしょうか?
授業料を値上げしても解消されない経営難
実際、国立大学の授業料がこのまま据え置きになる確証はありません。財務省と文科省の判断一つで再び値上げになる可能性は十分あるでしょう。
しかし、その時は、私立大学の授業料値上げとなって、最終的には家計への負担増に結びつくのではないでしょうか。その場合、少子化の影響に加えて、大学進学者の減少が加速する可能性もあります。授業料を上げるのも地獄、下げる(上げられない)も地獄なのかもしれません。
LIMO編集部