近年、結婚後も仕事を続けやすい環境づくりが推進され女性の社会進出がすすんだことなどを背景として、夫婦共働き世帯が増加しています。
夫婦共働き世帯の中でも、それぞれが高収入を得ている夫婦は「パワーカップル」と呼ばれています。
仕事をこなしながらも世帯を持ち高収入を得ている夫婦を、うらやましいと思った方もいるのではないでしょうか。
現役時代に夫婦で高収入を得ていれば、老後に受け取る年金も高額になることが考えられますが、厚生年金でゆとりある老後生活を送ることは可能なのでしょうか。
実際にシミュレーションをして検証していきましょう。
パワーカップルとは
一般的に、パワーカップルとは高収入を得ている共働き夫婦のことをいいます。
明確な定義が決まっているわけではなく、ニッセイ基礎研究所では「夫婦共に年収700万円以上の世帯」と定義されていたり、三菱総研では「夫の年収が600万円以上、妻が400万円以上で世帯年収が1千万円以上の夫婦」と定義されていたりします。
ニッセイ基礎研究所のレポートによると、パワーカップルは購買意欲が高いという特徴があり、都市部の高級マンションに住居を構えるケースが多く、世帯構成は夫婦と子どもの核家族が過半数を占めています。
また、妻の収入が高くなるほど夫の収入も高くなる傾向があり、働く女性が増えていることから、今後もパワーカップルが増加していくことが考えられます。
では、パワーカップル世帯のように現役時代に高額な収入を得ている場合は、老後は厚生年金だけでゆとりある生活を送れるのでしょうか?次章で詳しく確認していきましょう。
パワーカップルの年金額をシミュレーション
パワーカップルはゆとりある老後生活を送れるのかどうか、次のモデルケースでシミュレーションしてみます。
【モデルケース】
- 夫妻ともに会社員として勤務
・2003年3月以前の厚生年金の被保険者期間:96月
・2003年4月以降の厚生年金の被保険者期間:420月 - 夫の年収780万円(標準報酬月額:65万円)
- 妻の年収700万円(標準報酬月額:59万円)
- 国民年金は40年間(480月)納付済
夫の年金額
会社員など厚生年金に加入している方は、国民年金と厚生年金の両方を受給するため、それぞれ計算します。
国民年金は、保険料を40年間(480月)納付済であることから満額を受給することができます。令和5年度の国民年金は満額で月額6万6250円です。
では次に厚生年金を計算します。厚生年金額は以下の計算式で求めます。
厚生年金額=1+2
- 2003年3月以前の被保険者期間
平均標準報酬月額×7.125/1000×2003年3月までの被保険者期間の月数
- 2003年4月以降の被保険者期間
平均標準報酬額×5.481/1000×2003年4月以降の被保険者期間の月数
シミュレーション条件から、2003年3月以前の被保険者期間は96月、2003年4月以降の被保険者期間は420月であるため、以下のように計算できます。
- 2003年3月以前の被保険者期間
65万円×7.125/1000×96月=44万4600円
- 2003年4月以降の被保険者期
65万円×5.481/1000×420月=149万6313円
2つの期間を合計すると、194万913円となります。月額に換算すると約16万1700円で、国民年金と合わせると約22万7900円が毎月の受給額となります。
妻の年金額
同様に、妻の年金額も計算していきます。
国民年金は夫と同じく40年間保険料を納付済なので、毎月6万6250円が受給できます。
厚生年金は、上記の計算式を元に求めます。
- 2003年3月以前の被保険者期間
59万円×7.125/1000×96月=40万3560円
- 2003年4月以降の被保険者期
59万円×5.481/1000×420月=135万8191円
2つの期間を合計すると176万1751円で、月額に換算すると約14万6800円です。国民年金と合わせると毎月の受給額は約21万3000円になります。
世帯の年金額
夫と妻それぞれの年金額がわかりましたので、世帯としていくら年金を受給できるか計算します。夫が約22万7900円で妻が約21万3000円と計算できたため、合計は44万900円です。
ただし、20代や30代のうちから年収700万円以上を得ることは難しいことや、労働環境や家庭環境の変化などにより年収が減少する可能性もあります。
そのため、実際にはここまでの年金額には達しない可能性がある点にご注意ください。
では、仮に毎月約44万円の年金が受け取れる場合、ゆとりある老後生活を送れるのか、次章で検証していきます。
パワーカップルはゆとりある老後生活も可能
公益財団法人 生命保険文化センターが行った調査によると、夫婦二人にかかる老後の生活費は、最低でも毎月約23万2000円が必要という結果となっています。
前章で試算した結果の通り、夫婦で毎月約44万の年金を受給できれば、必要最低限の生活費は余裕をもって支払えることになります。
また、同調査によると、ゆとりある老後生活を送るために必要な金額は、必要最小限の金額に14万8000円プラスされ、約37万9000円という結果が出ています。
上乗せした金額の使いみちは旅行やレジャーが最も多く、次いで日常生活費を充実させるためや趣味・教養のためといった項目が多くなっています。
試算通りに夫婦で月額44万円の年金を受給できれば、ゆとりある老後生活も可能といえるでしょう。
しかし、住宅のリフォームや車の買い替え、子どもの結婚費用の援助などまとまった資金が必要になることもあるため、予定される支出分の貯蓄は必要になるでしょう。
まとめにかえて
パワーカップルは、現役時代に夫婦それぞれが高収入を得られるため、老後に受給できる年金額も高額になることが考えられます。
ただし、労働状況や家庭状況が変化する可能性もあり、高収入が維持できるとは限りません。また、老後にまとまった資金が必要になるケースがあります。
パワーカップルのように高収入世帯であっても、今後の状況変化に対応できるよう、老後資金の準備をすすめて行く必要があるでしょう。

