2025年には団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者となります。働き盛りの現役世代の中には、仕事と家族の介護の両立に悩む人も少なくないでしょう。

実は筆者もその一人。かつては社内初の介護休暇を取得し、最もしんどい時期を乗り越えた経験の持ち主です。

今回は、2023年10月18日に公表された「介護と仕事の両立」に関する調査結果も交えながら、働く人と介護について考えていきたいと思います。

1. 5人に1人が「介護をしながら仕事を続けた」と回答

株式会社Speeeが運営する「ケアスル介護」が公表した、仕事と介護の両立に関するインタビュー調査では、介護経験がある約5人に4人が、介護を続けながら仕事をしていたという結果が出ています。

この調査では、介護経験がある250名を対象として、介護による仕事の変化、そして介護休暇や介護休業給付金といった制度の活用状況について質問しています。

2. 介護との両立は「仕事にはどんな影響が出た?」

さきほどの「介護をしている間、仕事を続けていましたか」という質問で「はい」と答えた196名を対象に「介護によって生じた仕事上の変化」について質問した結果も出ています。

自由形式の回答の一部を見ていきましょう。

2.1 介護をしている間、仕事にどのような影響がありましたか?

■雇用形態や勤務時間・日数の変更

  • 「正社員からパートになった」
  • 「通院の付き添いの日は夜間業務にしてもらった」
  • 「勤務時間が減って、収入も減った」

正規雇用からパートへの転換、勤務時間帯の変更、さらには「勤務日を減らした」というケースも。働き方そのものを変えたというケースですね。

「欠勤、遅刻、早退した時間を休日出勤で補った。又給料を下げられた」「残業ができなく肩身が狭い」といったコメントも見られました。

介護との両立が収入減に繋がったケースや、残業ができず同僚に対する後ろめたさを感じるケースなども。お金の面だけではなく、気持ちの面でも負担を感じるシーンが多いことが推測されます。

仕事への集中力低下・慢性的な睡眠不足

  • 「とにかく睡眠時間が無くて、仕事中に眠くて困った」
  • 「睡眠不足で勤務中に睡魔に襲われた」
  • 「業務に集中するのが難しかった」
  • 「目を離せないから集中力が散漫になりがちだった」

トイレや食事の介助を必要としたり、一人で外出して迷子になってしまったりするケースの場合、常に見守りが必要となることもあるでしょう。

また、 「介護をしている母から急に呼び出されて、仕事を早退したり遅刻したりで、職場の方に迷惑をかけた」といった声も。勤務時間は仕事に集中したいが、それが叶わないという人もいるようです。

介護と仕事を両立しているケースでは、フレックスタイムを利用したり在宅勤務の契約に切り替わったという声もありました。

2.2 介護離職を決断する人も

時短勤務の場合、給与のダウンに繋がることがほとんどですから、フレックスタイムやリモートワークなどの勤務形態を活用できれば理想的ではあります。とはいえ、業種や職種によってはそれが叶わないこともあるでしょう。

また、在宅勤務に切り替わったとしても、ドア一つ隔てた隣の部屋で要介護の家族のケアをしながら「通常運転」で仕事ができるかどうかは、始めてみなければ分からない部分が大きいです。

「勤務時間中に家族から声をかけられ、何度も仕事を中断。集中力が保てなくなりパフォーマンスが低下してしまった」というケースは、実際に筆者自身も経験してきました。

また、100パーセントの力を出し切れないことに不甲斐なさを感じたり、「介護うつ」を発症したりして、自ら介護離職を選択した知人も。きっと、みなさんの周りにも同様のケースはたくさんあるのではないでしょうか。