最近では、企業の退職年齢が延びたり、老後の必要資金が不足していたりなど、様々な理由で60歳を超えても働く人が増えてきています。
筆者がお話をする方でも、「70歳までは働くつもりです」と仰る方が少し前よりも増えたなという印象です。
内閣府の「令和4年版高齢社会白書(全体版)」によれば、60代の就業率を2011年と2021年で比較すると、以下のようになっています。
《60~64歳》
・57.1% (2011年) / 71.5% (2021年)
《65~69歳》
・36.2% (2011年) / 50.3% (2021年)
この10年で、働く60代の方が15%前後増えていることが分かります。
今回は60代で貯蓄2000万円をクリアしている世帯がどれくらいあるのか、また、年金の受給額にスポットを当ててみたいと思います。
1. 60歳代「貯蓄額2000万円超」をクリアする世帯は約3割
金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]」をもとに、60歳代・二人以上世帯の金融資産保有額を確認してみましょう。
1.1 60歳代・二人以上世帯の金融資産保有額:中央値は700万円
※金融資産を保有していない世帯を含む
- 平均値:1819万円
- 中央値:700万円
60歳代の二人以上世帯の貯蓄額は、平均1819万円です。しかし、中央値は700万円と1000万円ほどの乖離が見られます。
平均値は、大きな数字によって引き上げられているようです。
データを小さい(大きい)順に並べた時に真ん中にくる「中央値」が、より実態に近いとされていますので60歳代・二人以上世帯の貯蓄額は、中央値を参考にしておきましょう。
ただし、やはり貯蓄額は世帯によって異なるものです。円グラフを見ていただくとお分かりのとおり、かなりバラバラといった印象です。
金融資産保有額ごとの人数割合で、60歳代・二人以上世帯の貯蓄事情を深掘りしていきましょう。
1.2 60歳代・二人以上世帯の金融資産保有額ごとの人数割合
- 金融資産非保有:20.8%
- 100万円未満:6.1%
- 100~200万円未満:5.5%
- 200~300万円未満:3.3%
- 300~400万円未満:3.2%
- 400~500万円未満:3.4%
- 500~700万円未満:5.3%
- 700~1000万円未満:6.1%
- 1000~1500万円未満:8.6%
- 1500~2000万円未満:5.7%
- 2000~3000万円未満:8.8%
- 3000万円以上:20.3%
- 無回答:2.9%
数年前に話題となった「老後2000万円問題」。
この「2000万円」を達成している世帯は約29.1%。約3割です。
一方、「貯蓄ゼロ」の世帯は20.8%、貯蓄100万円未満とあわせると26.9%。こちらも約3割です。
「60歳代」ですので、これから退職金を受け取り、一気に貯蓄額が増える世帯もあるでしょう。
世帯によってお金に関する事情はさまざまですが、人生100年時代ともいわれる長い老後を備えが十分でない状態で過ごすのは不安ですね。