年収1000万円の高給取りでも「貧乏」になる3つの理由
「年収1000万円」と聞くと、普段の生活も豪華なイメージがあるかもしれませんが、実際は「生活が苦しい」と感じる年収1000万円の世帯も多いです。
年収1000万円の「高所得貧乏」になる理由は、主に下記の3つです。
- 収入に対して税金負担がかかるため
- 助成金が対象外となるケースが多いため
- 生活水準を上げてしまうため
順にそれぞれの理由を解説していきます。
1. 収入に対して税金負担がかかるため
日本では、所得(課税金額)が高くなるほど税金が高くなる「累進課税制度」が取られています。
そのため、例えば年収400万円の人と比較すると、年収1000万円の方が税金負担がよりかかります。
配偶者の有無や世帯の状況によって控除額は変わりますが、年収1000万円近辺は税率が23%から33%になるラインとなります。
一定のラインを超えると、23%から33%へ一気に税率が10%も上がるため、さらに税金に対して負担を感じることも多くなるでしょう。
そのため、年収1000万円を超えたあたりから、年収1000万円を超えていない時よりもそこまで実際の手取りが増えないと感じてしまうのです。
2. 助成金が対象外となるケースが多いため
日本には、「児童手当」や「高等学校等就学支援金制度」、「乳幼児医療費助成制度」などの公的な助成や給付金がありますが、その多くが年収に制限を設けていることが多いです。
助成金や給付金に年収制限のある場合、多くが1000万円前後がラインとなることから、年収1000万円の人はこれらの制度が対象外となるケースがあります。
税金が増えることで手取りがあまり増えないだけでなく、受けられる公的な補助も対象外となることから、思っていた以上に「生活が楽にならない」と感じる人が多いのでしょう。
3. 生活水準を上げてしまうため
年収1000万円の「高所得貧乏」になる理由として「収入に対して税金負担がかかること」と「助成金が対象外となるケースが多いこと」を解説しました。
さらに、年収が上がるにつれて生活水準を上げてしまう人がいるのも、生活が苦しくなる1つの要因でしょう。
年収が増えることにともない、以前よりも家賃の高い住まいに引っ越したり、車を買い替えたりすると、いざ年収1000万円に到達した際に、税金だけでなくローンにも追われる日々になります。
一度生活水準を上げてしまうと、そこから再び下げるのは難しいため、結果的に支出が以前よりも膨らみ、生活が苦しくなるという状況になるのかもしれません。
年収1000万円を目指している方は、年収1000万円以上になるとかかる税金負担を考慮し、一気に生活水準を上げずに生活スタイルを徐々に見直していけると良いでしょう。
老後も見据えて計画的な貯蓄をしていこう
本記事では、年収1000万円という「高給取り」の人が日本に何割いるのか、年収1000万円でも生活が苦しい理由について解説していきました。
「年収1000万円以上」を目指す人は多いですが、実際に達成している人はわずか4.9%となっています。
しかし、世帯年収でみるとその割合は12.6%まで上がることから、共働きが一般的となった現代では、現実的に難しくない年収額なのかもしれません。
とはいえ、年収1000万円に到達しても生活が楽になるとは限りません。
年収1000万円以上でも、税金負担が多くなるだけでなく、公的な補助の対象外となるケースが多くなることから「高級取り貧乏」の人も多いとうかがえます。
年収1000万円以上になった際の税金負担を考慮せずに、生活水準を上げてしまうと、収支のバランスが崩れてしまい、高級取りでも貯蓄に回せない状況になってしまうこともあります。
どれだけ年収が上がっても、収支のバランスを考え、計画的に貯蓄をしていけるように意識していけると良いでしょう。
参考資料
- 国税庁「令和3年分 民間給与実態統計調査」
- 国税庁「令和4年分の年末調整のための算出所得税額の速算表」
- 厚生労働省「2022年 国民生活基礎調査の概況II 各種世帯の所得等の状況」
- 帝国データバンク「上場企業の平均給与、22年度は「638万円」過去20年で最高額 7割が「増加」、4社に1社は30万円以上アップ」
太田 彩子