3つのポイントの見出し
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老齢年金の受給開始は原則65歳だが、ライフスタイルに合わせて「60歳~75歳」の間で選ぶことができる -
60歳~64歳で早めに受け取り始める「繰上げ受給」の利点と盲点とは -
66歳~75歳で受け取り始める「繰下げ受給」の利点と盲点とは
2023年3月16日、フランスで年金制度改革案が強行採択されました。
年金受給開始年齢が現在の62歳から64歳に引き上げられたことに対して反対を示す市民も多く、今でも反政府デモが引き続きおこなわれているようです。
ちなみに日本では年金の受給開始年齢は原則65歳から。でも「繰上げ受給」と「繰下げ受給」の制度を利用すると、受給開始年齢を60歳まで早めたり、75歳まで後ろ倒ししたりできますね。
「繰上げ受給・繰下げ受給」ともに、個人のライフスタイルに合わせた柔軟性の高い制度にも思えますが、デメリットはないのでしょうか。
今回は、年金の「繰上げ・繰下げ受給」の利点と盲点について解説していきたいと思います。
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1. 【老齢年金】60~64歳で受け取る「繰上げ受給」利点と盲点
繰上げ受給は65歳よりも早く年金を受け取るかわりに、前倒しした月数に応じて年金額が減額される仕組みです。
定年退職後、65歳までの生活資金に不安がある場合などには選択肢の一つとなり得るでしょう。繰上げ受給の利点は、なんといっても早く年金を受け取れる安心感ですね。とはいえ、その分年金が減るわけです。
では、繰上げ受給した場合、実際どのくらい年金額は減るのか、具体的に見ていきましょう。
以下は、繰上げ受給した際の減額率の計算式です。
- 減額率=0.4%×繰上げ請求月から65歳に達する日の前月までの月数
※昭和37年4月1日以前生まれの方の減額率は、ひと月ごとに0.5%(最大30%)
減額率は繰上げ受給するタイミングにより、下記のように変わります。
- 60歳0ヶ月:24.0%
- 61歳0ヶ月:19.2%
- 62歳0ヶ月:14.4%
- 63歳0ヶ月:9.6%
- 64歳0ヶ月:4.8%
受給開始年齢を5年早めて60歳から受け取った場合、減額率は24%。
厚生労働省「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金の平均月額(男女全体)は14万3965円です。24%の減額になれば、毎月の年金受給額は10万9413円。本来の受給額より3万4551円も少なくなります。
1.1 繰上げ受給の「盲点」
また、この繰上げ受給についてはもう一つ盲点ともいえる注意事項があります。それは「減額された年金額は、本来の受給開始年齢である65歳以降も生涯変わらないという点です。
60歳まで繰上げした場合の年金額は本来より3万4551円、年間で40万円以上も本来の受給額より少なくなります。
繰上げ受給をするか悩んだ時は、「生涯減額された年金を受け取る」ことを念頭に、慎重な判断が必要となりそうです。
2. 【老齢年金】66歳~75歳で受け取る「繰下げ受給」
つづいて、「繰下げ受給」についても見ていきます。繰下げ受給は、65歳よりも受給開始年齢を遅くする代わりに、受給開始年齢を後ろ倒しにした月数に応じて年金額が増えるという仕組みです。
シニアの就業環境が整いつつあるこんにち、65歳以降も働き続ける人が増えています。元気なうちは長く働き、その間、年金は繰下げに。完全リタイアしたあと増額された年金を受け取るのも一案かもしれません。
実際に繰下げ受給を選択した場合、年金額はどのくらい増えるのか具体的に見ていきましょう。
以下は、繰下げ受給した際の増額率の計算式です。
・増額率=0.7%×65歳に達した月から繰下げ申出月の前月までの月数
※昭和27年4月1日以前生まれの方(または平成29年3月31日以前に老齢基礎(厚生)年金を受け取る権利が発生している方)は、繰下げの上限年齢が70歳(権利が発生してから5年後)まで。
増額率は繰下げ受給するタイミングにより、下記のように変わります。
- 66歳0ヶ月:8.4%
- 67歳0ヶ月:16.8&
- 68歳0ヶ月:25.2%
- 69歳0ヶ月:33.6%
- 70歳0ヶ月:42.0%
- 71歳0ヶ月:50.4%
- 72歳0ヶ月:58.8%
- 73歳0ヶ月:67.2%
- 74歳0ヶ月:75.6%
- 75歳0ヶ月:84.0%
受給開始年齢を10年遅らせると増額率は84%。先ほどの厚生労働省の同データによれば、厚生年金の平均月額(男女全体)は14万3965円。これを75歳まで繰下げした場合に受け取れる年金額は26万4895円。月額で12万930円も増えるわけです。
2.1 繰下げ受給の「盲点」
ただし、この「繰下げ受給」には、注意すべき点があります。日本年金機構のHPの「繰下げの注意点」をもとに整理します。
- 加給年金額や振替加算額は増額の対象にならない。また、繰下げ待機期間(年金を受け取っていない期間)中は、加給年金額や振替加算を受け取ることができない。
- 65歳に達した時点で老齢基礎年金を受け取る権利がある場合、75歳に達した月を過ぎて請求を行っても増額率は増えない。
- 日本年金機構と共済組合等から複数の老齢厚生年金(退職共済年金)を受け取ることができる場合は、すべての老齢厚生年金について同時に繰下げ受給の請求をしなくてはいけない。
- 65歳の誕生日の前日から66歳の誕生日の前日までの間に、障害給付や遺族給付を受け取る権利があるときは、繰下げ受給の申し出ができない。ただし、「障害基礎年金」または「旧国民年金法による障害年金」のみ受け取る権利のある方は、老齢厚生年金の繰下げ受給の申し出ができる。
- 66歳に達した日以降の繰下げ待機期間中に、他の公的年金の受給権(配偶者が死亡して遺族年金が発生した場合など)を得た場合には、その時点で増額率が固定されるため、年金の請求の手続きを遅らせても増額率は増えない。
- 厚生年金基金または企業年金連合会(基金等)から年金を受け取っている方が、老齢厚生年金の繰下げを希望する場合は、基金等の年金もあわせて繰下げとなる。
- このほか、年金生活者支援給付金、医療保険・介護保険等の自己負担や保険料、税金に影響する場合がある
- 繰下げ請求は、遺族が代わって行うことはできない。繰下げ待機中に亡くなった場合で、遺族の方からの未支給年金の請求が可能な場合は、65歳時点の年金額で決定したうえで、過去分の年金額が一括して未支給年金として支払われる。ただし、請求した時点から5年以上前の年金は時効により受け取れなくなる。
次の項では、これらの注意点を知らずに繰下げ受給を選択して後悔するケースについて、いくつか具体的に説明していきます。
3. 【繰下げ受給】年金を増やしすぎて後悔するケースとは?
ここからは、繰下げ受給の8つの注意点の中から2つピックアップして、繰下げ受給して後悔するケースについて詳しく解説していきます。
3.1 繰下げ待機期間中は「加給年金」がもらえない
加給年金とは年下の妻や子どもに支給される手当で「年金の家族手当」のような位置づけです。妻が一定の要件を満たすとき、1年あたり22万3800円の年金が加算されます。
さらに、老齢厚生年金を受けている方の生年月日に応じて、配偶者の加給年金額に追加で3万3100円から16万5100円が特別加算されます。
加給年金は妻が65歳になるまで受給できますが、繰下げ待機期間中は受け取れません。仮に5歳差の夫婦の場合、最低でもトータル112万円ほどの加給年金を受け取れなくなるので注意しておきましょう。
3.2 税金や社会保険料の負担が増え「手取りが減る」
繰下げ受給によって年金が増えると、税金や保険料(健康保険料や介護保険料)も高くなります。
せっかく繰下げ受給で年金額を増やしたのに、天引きされる金額も大きくなり、手取りが減るケースもあります。特に非課税から課税に変わった場合は要注意。手取りが逆転する可能性もあります。
4. まとめにかえて
今回は、年金の「繰上げ受給」と「繰下げ受給」の基本について整理しました。
2023年度の公的年金は3年ぶりに引き上げられましたが、いまの物価高騰には追いついておらず、実質目減りしています。現役世代の中には漠然とした年金不安を抱く人も多いでしょう。
「長く働き続ける」もしくは「不労収入や貯蓄で生活費を確保できる」ことができれば、年金の繰下げ受給を検討するのも一案かもしれませんね。
ただし、先述の通り、繰下げ受給には「加給年金が受け取れない」「年金から天引きされる税や社会保険料が増える」といった盲点があります。
また「何歳まで生きるか」を事前に知ることはできませんから、繰下げ期間中に亡くなってしまうケースや、ほとんど年金を受給せずに亡くなってしまうことも起こり得るでしょう。
年金受給のタイミングは、資産の状況や健康状態などを総合的に考慮しながら、ご自身や家族が「後悔しない」選択をしたいものですね。メリット・デメリット双方を知り、最適解を探していきましょう。



