老後の備えが大切と叫ばれている昨今、具体的にどのくらい貯蓄があれば老後は安心なのかで悩んでいませんか。

特に、50歳代といえば子どもの学費や住宅ローンなどに加え、老後のことも不安になってくる時期です。

自民・公明両党が2022年12月16日に公表した「令和5年度税制改正大綱」では、新しいNISA(少額投資非課税制度)制度について示されており、老後資金準備について改めて考える方もいるでしょう。

何かと出費がかさむ50歳代ですが、平均で貯蓄がどのくらいなのかをまとめてみました。また、老後生活費についても見ていきましょう。

定年前「50歳代」の平均貯蓄額はいくらか。中央値とも比較

まずは金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査(令和3年)」より、50歳代の貯蓄を確認しましょう。

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出所:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査」各種分類別データ(令和3年)」より筆者作成

出所:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査」各種分類別データ(令和3年)」より筆者作成

全体の貯蓄を表すのは、平均値と中央値の2つがあります。

平均値とは全体のデータを平均したものを表した数値で、中央値はすべての統計のデータを大きい順または小さい順から並べたときにくる真ん中の数値のことです。

一般的に、平均値は極端な数値に少なからず影響を受けます(例:10人いて、9人の貯蓄が1万円として、一人が100万円だとすると、平均値は10万9000円となる)。

一部の資産家の影響で平均値は引き上げられるので、真ん中の数値を表している中央値の方がより実態に近い数値と言えます。

金融広報中央委員会が公表している2021年度「家計の金融行動による世論調査」によると、50歳代の二人以上の世帯の貯蓄平均額は1386万円、中央値は400万円で、50歳代単身世帯の貯蓄平均額は1067万円、中央値が130万円という結果でした。

平均で見れば「貯蓄が1000万円以上あるの…」と感じた人もいらっしゃるかもしれません。

上記のデータを見る限りでは、50歳代の二人以上の世帯と単身世帯の貯蓄平均額は、いずれも1000万円を超えています。

二人以上の世帯の貯蓄が約319万円高い理由は、共働き世帯がおり、その分収入が多いと考えられるでしょう。

一方で50歳代の貯蓄の中央値についてですが、こちらも二人以上の世帯が単身世代よりも270万円高くなっています。

より実態ベースの中央値からみても二人以上世代の方が貯蓄が多いと言えます。

逆に、50歳代の単身世帯は中央値が130万円ということで、ほとんど貯蓄していない人も多いことがうかがえました。

一般的には、50歳代は定年をひかえている一方、年収が最も高い時期と重なるため、全体的な貯蓄の平均を押し上げている側面もあるのではないでしょうか。

老後の最低生活費はおよそ月23万円

では、実際に老後にかかる生活費はいくら必要なのでしょうか。

生命保険文化センターが公表している2022年度の「生活保障に関する調査」によると、夫婦二人が老後生活を送るうえで必要な最低の日常生活費は月額あたり平均23万2000円でした。

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出所:生命保険文化センター「老後の生活費はいくらくらい必要と考える?」

出所:生命保険文化センター「老後の生活費はいくらくらい必要と考える?」

また、ゆとりのある日常生活費を送ろうとする場合には、月額あたり平均37万9000円かかります。

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出所:生命保険文化センター「老後の生活費はいくらくらい必要と考える?」

出所:生命保険文化センター「老後の生活費はいくらくらい必要と考える?」

なお、ゆとりのある老後でのお金の使い道は「旅行・レジャー」が最も高く、続いて「日常生活費の充実」や「趣味・娯楽」でした。

やはり、老後の暮らしでは、ある程度自分の好きなことにお金を使いたいと思う傾向にあるのではないでしょうか。

人生100年時代を見据えたマネープランを

最近では、人生100年時代とも言われています。

少し前の資料にはなりますが、2017年12月19日に開催された「人生100年時代構想会議 中間報告」に関するとりまとめには、目を見張るような内容が書かれていました。

「ある海外の研究では、2007年に日本で生まれた子供の半数が107歳より長く生きると推計されており、日本は健康寿命が世界一の長寿社会を迎えています。」

出所:人生100年時代構想会議中間報告より引用 

仮に、100歳まで生きるとして計算した場合、定年を60歳とすると約40年間あります。

先ほどの生命保険文化センターの調査より、老後にかかる最低の日常生活費で計算すると

  • 23万円×12カ月=約276万円(年間)
  • 276万円×40年間=約1億1040万円

これだけの生活費がかかります。

一方、2019年6月3日に金融庁から公表された金融審議市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」によると、夫が65歳以上で妻が60歳以上の夫婦のみの世帯の場合、毎月の年金収入は約20万9198円でした。

この資料をもとに、老後の平均的な収入を計算すると

  • 約21万円×12年間=約252万円(年間)
  • 252万円×40年間=約1億80万円 

※年金収入は四捨五入し、約21万円で計算

先ほどの支出から、収入を差し引くと以下のとおりです。

  • 約276万円-約252万円=24万円(年間)
  • 24万円×40年間=約960万円

つまり、仮に100歳まで生きるとして老後は最低の生活費がかかると想定した場合には、平均で約960万円不足すると考えられます。

老後費用はケースごとに検討を

先ほどの計算上では、1000万円の貯蓄で老後は安心できると言えるかもしれません。

しかし、老後は思いもよらない費用がかかるケースも少なくないでしょう。

具体的には、介護費や傷病時の治療費などです。

特に、介護費用に関しては老人ホームへの入居、あるいは介護福祉サービスを利用する場合、大きな負担となることが想定されます。

この点は、いくら日常的に予防を心掛けていても、予防できない部分もあるはずです。

また、先ほどの試算は平均的な金額であり、実際にはご家庭により加入している年金や加入状況、また生活費などによっても異なるものです。

それらに備えて、定年前の50歳代からの確実な資金の準備が試金石となってきます。特に、貯蓄とは別の退職金や保険といった、まとまったお金は老後へ向けての重要な資金となるでしょう。

これを機に、老後に向けて少しずつ意識を向けていきましょう。

さまざまな方向から老後を見据えた計画を

定年前の50歳代の貯蓄について見てきましたが、平均値や中央値だけでは分からない家計ごとの事情も当然あるはずです。

ただ、中央値は二人以上の世帯が約400万円、単身世帯が130万円と、貯蓄があまりない人も少なくないことが読み取れたのではないでしょうか。

この結果から、自分に当てはめて考えてみた人もいるかもしれませんが、あまり一喜一憂せず、現時点での貯蓄額を把握できたことが大きな一歩です。

今では、定年を迎えても「働けるまでは働く」という人も多いため、健康であることが重要な部分もあるでしょう。

貯蓄ももちろん大事ですが、健康に留意し、老後をどのように過ごしたいか改めて考えてみることも大切ではないでしょうか。

参考資料 

鳥谷 威