老後費用はケースごとに検討を
先ほどの計算上では、1000万円の貯蓄で老後は安心できると言えるかもしれません。
しかし、老後は思いもよらない費用がかかるケースも少なくないでしょう。
具体的には、介護費や傷病時の治療費などです。
特に、介護費用に関しては老人ホームへの入居、あるいは介護福祉サービスを利用する場合、大きな負担となることが想定されます。
この点は、いくら日常的に予防を心掛けていても、予防できない部分もあるはずです。
また、先ほどの試算は平均的な金額であり、実際にはご家庭により加入している年金や加入状況、また生活費などによっても異なるものです。
それらに備えて、定年前の50歳代からの確実な資金の準備が試金石となってきます。特に、貯蓄とは別の退職金や保険といった、まとまったお金は老後へ向けての重要な資金となるでしょう。
これを機に、老後に向けて少しずつ意識を向けていきましょう。
さまざまな方向から老後を見据えた計画を
定年前の50歳代の貯蓄について見てきましたが、平均値や中央値だけでは分からない家計ごとの事情も当然あるはずです。
ただ、中央値は二人以上の世帯が約400万円、単身世帯が130万円と、貯蓄があまりない人も少なくないことが読み取れたのではないでしょうか。
この結果から、自分に当てはめて考えてみた人もいるかもしれませんが、あまり一喜一憂せず、現時点での貯蓄額を把握できたことが大きな一歩です。
今では、定年を迎えても「働けるまでは働く」という人も多いため、健康であることが重要な部分もあるでしょう。
貯蓄ももちろん大事ですが、健康に留意し、老後をどのように過ごしたいか改めて考えてみることも大切ではないでしょうか。
参考資料
- 自由民主党 公明党「令和5年度税制改正大綱(2022年12月16日公表)」
- 国税庁「令和3年分 民間給与実態統計調査」
- 生命保険文化センター「老後の生活費はいくらくらい必要と考える?」
- 厚生労働省「「人生100年時代」に向けて」
- 金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」
鳥谷 威