2. 危機的なように感じる公的年金制度が破綻しない理由

少子高齢化が進行している状況ではありますが、実際のところ、日本の公的年金制度は以下の2つの理由から破綻しないと言えます。

2.1 理由1:年金制度が長期的に維持できるシステムになっている

厚生年金の適用となる対象者は、2016年(平成28年)10月からは、従業員数が501人以上の事業所で、「週30時間以上働く労働者」から、「週20時間以上働いており、賃金の月額が8万8000円以上で、雇用期間が1年以上見込まれる労働者」も加入するよう対象範囲が拡大されました。

その後、2022年(令和4年)10月からは、従業員の数が常時101人以上の事業所、2024年(令和6年)10月からは、従業員数が51人以上の事業所へ対象が拡大します。

これより、厚生年金の被保険者となる短時間労働者は、新たに約110万人増えると見込まれています。

もし、これから年金を受け取る高齢者が増えたとしても、厚生年金に加入する人が増え公的年金の財源となる収入が増加すれば、公的年金の長期的な維持につながります。

他にも、事業主に対して、70歳までの定年の引上げや、定年制の廃止などの努力義務を設けるなど、シニアの働く環境作りを推進し、年金保険料収入を増やすことが考えられています。

このように、公的年金制度は、保険料収入と支出のバランスを常に取るよう工夫されているのです。

2.2 理由2:マクロ経済スライドで収入と給付を調整している

2004年の年金制度改正では「マクロ経済スライド」という制度が導入されました。マクロ経済スライドでは、賃金や物価の上昇にともなう年金給付の伸びが抑えられます。

年金収入である保険料と支出である年金給付のバランスがとれるため、年金を受給している高齢者と、保険料を負担している現役世代との公平性が高くなります。