行き過ぎた円安でも戻るとは限らない

円安が行き過ぎているなら、遠からず戻るだろう、と考える人もいるでしょうが、そう考えるのは危険かも知れません。

原油価格が下がって米国の金利が下がれば、ある程度下がるでしょうが、「円安が行き過ぎると日本の輸出数量が増えてドル売り注文が増えてドルが安くなる」という効果があまり期待できないからです。

新型コロナが収束して海外からの観光客が増えれば、多少ドル売りが増えるかも知れませんが、国内の観光業界が労働力不足だという話も聞こえてきますので、効果のほどは不明です。

日本政府が介入でドルを安くしようとするかも知れません。ドル高円安自体の景気への影響はそれほど大きくなくても、為替レートの急激な変動それ自体が経済に与える影響はマイナスだからです。

しかし、それも容易では無いでしょう。介入が効果を持つか否かは、市場参加者が介入が効くと思うか否かにかかっています。皆が効かないと思えば効きません。介入の金額は市場で取引されているドルの金額と比べて遥かに小さいからです。

市場参加者が介入に効果があると考えれば、「円安が修正されそうだから、今のうちに円を買っておこう」と考えて買うかも知れず、そうなれば円安が急激に修正されるかも知れません。しかし、それは期待薄だと思います。

それは、米国にとってドル高円安は望ましいからです。米国は現在、インフレに悩んでいるので、ドル高の方が輸入物価が下がりやすく、喜ばしいのです。

したがって、日本政府が本気で介入して円安の流れを逆転してしまうような事は米国が望まないのです。市場参観者もそれがわかっているので、介入があってもあまり気にしていない、というわけです。

本稿は、以上です。なお、本稿は厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。

<<筆者のこれまでの記事はこちらから>>

塚崎 公義