有名な「3千万語の差」
教育の分野でも科学的な見地に立って研究する、アメリカで幼児期の語彙力で最も有名かつインパクトの強い調査結果が「The Early Catastrophe The 30 Million Word Gap by Age 3」です。
カンザス州で1980年代に行われた調査は被験者の数は42世帯程度と少ないものの、2年半に及ぶ調査は子どもの語彙獲得の変化が分かる貴重な研究調査です。
同調査では端的に言えば「高所得世帯の子どもは語彙が豊富で低所得世帯の子どもは語彙が少ない」と結論づけています。しかし、所得の差が直接子どもの語彙力に影響を与えたわけではありません。
調査から高所得世帯の親は低所得世帯に比べて子どもへの声がけや使用している語彙の数も多く、その結果、子どもの語彙力が鍛えられているとしています。
また被験者の追跡調査をした結果、語彙力の差は9歳から10歳、日本では小学3年生の時点でもその差は引き継がれると記されています。
つまり、何もしなければ幼児期に生じてしまった語彙力の差が逆転することはないということになるのです。
最近の調査でも語彙に関して興味深い結果が出ました。
2017年のハーバード大学とMIT(マサチューセッツ工科大学)の研究者による調査で、子ども達が話を聞いている時の脳の動き方を調べたところ、保護者との会話が多い環境で育っている子どもは他の子とは違う脳神経の使い方をすることが分かりました。