4. 厚生年金の分割制度には2種類ある

具体的に年金の分割制度を深掘りしてみましょう。分割には2つの種類があります。

4.1 合意分割制度

合意分割制度とは、基本的に分割割合を話し合いで決定し(話し合いがつかない場合は調停や裁判をする)、1/2を上限に婚姻期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を分割するというものです。

条件は次の3点です。

  • 婚姻期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)があること(共済組合などの組合員である期間を含む)
  • 夫婦双方の合意または裁判手続により按分割合を定めたこと(合意がまとまらない場合は、当事者の一方の求めにより、裁判所が按分割合を定めることが可能)
  • 請求期限(原則、離婚等をした日の翌日から起算して2年以内)を経過していないこと

これらの条件を満たせば、第3号被保険者である妻は、自分の国民年金(基礎年金)に「分割された標準報酬月額・標準賞与額に応じた厚生年金額」を加算して受取ることができます。

4.2 3号分割制度

3号分割制度とは、合意分割制度では合意がまとまらないケースのため、第3号被保険者を守る観点から設けられた制度です。

2008年5月1日以降に離婚をした方は、第3号被保険者からの請求により、結婚していた間の相手方の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)の1/2を分割することができます。

強制的に1/2と決められた点がポイントです。条件は次のとおり。

  • 婚姻期間中に2008年4月1日以後の国民年金の第3号被保険者期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)があること(共済組合などの組合員である期間を含む)
  • 請求期限(原則、離婚等をした日の翌日から起算して2年以内)を経過していないこと

この2つの条件を満たせば、合意分割制度と同様、自分の国民年金に相当額を加算して受取ることができます。

4.3 本人の年金受給資格も必須

ただし、年金受給を受ける本人が、年金受給資格がない(保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間の合計が10年以上にない場合など)場合には、せっかく年金分割をしても年金が受け取れないことになるため注意が必要です。