アルマの経済効果「8.5億円」の試算

では、境町は「地方の公共交通は赤字」という事実にどう向き合ったのでしょうか。

アルマの社会実装を支えている事業者BOLDLY社によれば、年間乗客数は6000人弱で、仮に1回あたりの運賃として100円を徴収したとしても60万円程度にしかならないとしています。

しかしこの1年半でアルマは8.5億円の経済効果を生んだと試算されています。これは、観光客増加による消費の増加、メディアによる広告効果、ふるさと納税による自動運転向け寄付であるとされます。

仮にこうしたモビリティが、高齢者を含む住民の健康状況を改善するのであれば、将来的には社会保障費の低減という効果も見込めるかもしれません。境町の社会実装の事例は、地域モビリティの収益構造のあり方にも一石を投じたとされています。

もし境町に自動運転バスを見に行かれる方がいるのであれば、是非アルマだけでなく、その走行を支えるヒトや町にも目を向け、「社会課題解決に向けた種まきをし、社会で技術と仕組みを育てている姿」を感じてもらえたらと思います。

100%の技術を待っていたらいつまでもイノベーションは起きません。利用者と事業者が、慎重にチャレンジを重ねる共創体制が、新しい技術の社会実装への最短距離を作り出すのではないでしょうか。

参考資料

第一生命経済研究所 宮木 由貴子