自動運転バス「アルマ」境町の挑戦

そうした視点を取り入れて運用しているのが境町です。境町で導入しているのは、フランスのNAVYA社のアルマという車両で、これを11人乗りの自動運転バスとして、時速20キロ以下で町内を走行させています。

走行車線は追い越し禁止なので、法定速度まで出している一般車両はアルマの後ろにたまってしまうことが多々あります。進路上に障害物があればそれだけで走行に難をきたします。

境町の住民は、アルマの円滑な走行のために、路上駐車をしないことを徹底させました。

さらにルート沿いの住民の多くが自ら私有地をバス停として供出することで、後続車がアルマの停車中に車線上で滞留せず進めるようにしました。

車内では境町出身者のミュージシャンの曲を流し、外装についても「ゆっくり走る」ことを想起させるデザインを施しました。

境町の「道の駅」ではアルマを描いたパッケージでサンドウィッチが売られています。こうした工夫により、住民は「自分たちのモビリティとしてのアルマ」という意識を強く持ち、走行環境を自ら整備・育成し、路線拡大にまでつなげました。

住民は自らアルマをより価値のあるものにしようという意識を持っていますし、町の子どもたちはアルマを見かけると駆け寄って手を振ります。筆者は実際にこれらを自分の目で見てきました。