KDDIの株価はなぜ上場来高値まで上昇したのか
KDDIの株価の上昇について、「安定感」が買いを誘った可能性はありそうです。
KDDIが2022年1月28日に発表した決算では、売上高が4兆0138億円(前年同期比+2.3%)、営業利益が8745億円(同+0.4%)、親会社の所有者に帰属する四半期利益純利益が5542億円(同+1.0%)となりました。
増収率と増益率は決して高くないです。
しかし、決算が発表された1月下旬は、日経平均株価が暴落したタイミングでもありました。
投資家はリスクを回避する姿勢が強まっていたと考えられ、結果としてディフェンシブな事業を展開するKDDIの相対的な魅力が高まったのではないでしょうか。
これは、ロシア・ウクライナ情勢に対する警戒が強まった局面でも同じで、国内事業メインのKDDIはリスク回避の買いを誘いやすかった可能性があります。
また、KDDIは前述の決算と併せ、自社株買い計画の拡大を発表しました。
従来、上限1500億円・5200万株(自己株式を除いた発行済株式総数の割合:2.29%)としていた取得枠を、上限2000億円・6900万株(同3.03%)へと引き上げました。
取得期間の期限も、2022年3月24日から2022年5月31日へと延長されました。
これも投資家の好感を誘ったと推察できます。
KDDIの「安定感」以外の魅力とは
KDDIには、安定感だけでなく「成長性」に関する材料もあります。
2022年1月28日には、ドローン事業拡大に向けて組織再編のリリースを発表しました。
また、2022年2月18日には、韓国のサムスン電子、富士通(6702)と共同で、商用ネットワークに接続するオープン化した5Gスタンドアローンの仮想化基地局によるデータ通信に成功したと発表しました。
これらはまだKDDIの収益に大きく貢献しているわけではないですが、将来の収益に対する期待を高める材料にはなったのではないでしょうか。
執筆者
1991年生まれ。新潟県新潟市出身。2022年に株式会社モニクル傘下の株式会社ナビゲータープラットフォームに入社し、現在はメディア事業部・メディアグロース企画推進室マネージャー。くらしとお金の経済メディア「LIMO(リーモ)」を中心に、多くの読者の方に幅広いコンテンツを届けるための戦略立案に従事している。
それ以前は、LIMO編集部にてアシスタント・コンテンツマネージャー(ACM)として従事。第一報として報道されるニュースを深堀りし、読者の方が企業財務や金融に対する知的好奇心を満たしたり、客観的データや事実に基づく判断を身に付けられたりできる内容の記事を積極的に発信していた。
入社以前は、株式会社フィスコにて客員アナリストとして約20社を担当し、アナリストレポートを多数執筆。また、営業担当として、IRツール(アナリストレポート、統合報告書、ESGレポートなど)やバーチャル株主総会サービス、株主優待電子化サービスなどもセールス。加えて、財務アドバイザーとしてM&Aや資金調達を提案したほか、上場企業向けにIR全般にわたるコンサルティングも提供。財務アドバイザリーファームからの業務委託で、数千万~数十億円規模の資金調達支援も多数経験。
株式会社第四銀行(現:株式会社第四北越銀行)、オリックス株式会社でも勤務し、中小・中堅企業向け融資を中心に幅広い金融サービスを営業した。株式会社DZHフィナンシャルリサーチでは、日本株アナリストとして上場企業の決算やM&A、資金調達などのニュースと、それを受けた株価の値動きに関する情報・分析を配信。IPOする企業の事業・財務を分析し、初値の予想などに関するレポートを執筆。ロンドン証券取引所傘下のリフィニティブ向けに、週間・月間レポートで、日本株パートを執筆。経済情報番組「日経CNBC」にて毎月電話出演し、相場や株価の状況も解説していた。
新潟県立新津高等学校を経て、2013年に慶応義塾大学商学部を卒業。学部では、岡本大輔研究会にて企業評価論、計量経営学を専攻していた。
最終更新日:2023/11/03