サッカーが上手くなるためには、とにかく大切なのは、正しい練習をするということ。当たり前です。
部活動の練習と称して、1日に10 km以上も走るなんて間違った練習をやっていれば、誰だって疲れます。疲れを蓄積させて試合に臨んでいいパフォーマンスを発揮できるはずがありません。
めちゃくちゃ高性能なF1のタイヤだって、レースで15周も走ればボロボロです。無理な走りをすればエンジンだってやられてしまう。だからピットストップする。それと同じです。
練習は多くても週3日、1日の練習時間は90分
人間の足(タイヤ)や心臓(エンジン)は、当然のことながら替えが利きません。一度摩耗したタイヤは捨てるしかないのだけど、人間の体は自然治癒力というものすごい能力を持っている。
そして、その再生する力を発揮させるには、ちゃんと食べて、たくさん寝る。これしかない。だから適度な休みが必要なのであって、その大切な休みがなければいつかは摩耗し、ついには壊れてしまいます。
ですから小学生も中学生も高校生も、週の練習は多くて「3日」。1日の練習時間は「90分」。
17〜18歳以上になればもう少し長くやってもいいのですが、それでも1回あたり「120分」を超えることはあってはなりません。
ここに週末の試合が加われば、活動日数は週4。負荷をかけた後の回復に要す時間を考えるまでもなく、これ以上の練習量は物理的かつ医学的に不正解だからです。
元セリエA選手が見た過剰な練習によるマイナス影響
もちろん、これもまた私が勝手に言ってるのではありません。アレッサンドロ・チュッリーニ(現アルバニア代表フィジオテラピスト)だけでなく、元セリエAの選手にして現在は育成現場で指導にあたる監督たちの皆も一人の例外なく述べる理論なのです。
その一つの具体的な例として、現在「テクニカル・サッカー・プロジェクト」という名の育成組織を主宰するルカ・サウダーティ(元ミラン、エンポリFW)は、2018年にモンゴルのU15チームを6ヶ月に渡ってイタリアで指導した経験について、こう語っています。
「指導を始めた頃のこと。綿密に練習プログラムを組んで実践しているはずなのに、出るべき成果が一向に見えてこない。そんな時期が約3週間くらい続いたんだよ。わかりやすい例をあげれば、練習を重ねるごとに子供たちの動きが鈍くなっていく。これは一体どういうことだってことになってね、引率しているモンゴル人のコーチたちに尋ねてみると、なんと彼らは僕らの指導を受けた後に別の場所へ移動して長い距離を走っていると言うんだ。僕らが行う1日のトレーニングは90分間。長いときで110分。つまり、それだけの練習量では〝物足りない〟ということで、彼らは昼食を終えたその足でフィレンツェの河川敷へ行っては延々と走っていた。走り込むだけでなく、ものすごい数の腕立てや腹筋をやったり・・・。もちろん、こんなことを勝手にされたのでは僕らのプログラムは台無しだよ。」
アジアのコーチ陣を説得するのに多くの時間がかかった現実
ところが、モンゴルのコーチ陣を説得するには約1ヶ月を要したという。
「長い時間をかけて話をして、ようやく納得してくれてね。そこからはもちろん走り込みも筋トレも完全に禁止。そして、ではその結果がどうだったかというと、僕らの狙い通り、参加していた36人全員のフィジカル能力(yo-yo testの数値など)が著しく向上していたんだ。」
つまり、過度な負荷の連続は逆にフィジカル能力の向上を阻害する、サッカーに必要な運動能力はサッカーをすることによって培われていくということです。
「もちろんそれだけではなくて、ムダな疲労を取り除くことができたからこそ、テクニックや戦術理解といった面でも飛躍的な向上をみることができた。疲れが溜まっていなければ、その分、体のキレが増すだけでなく脳の動きも活発になる。モチベーションも集中力も増す。サッカーで最も大切な〝一瞬の判断〟、ここに大きな違いが出るということ。結果、僕らの指導を受ける前には4人だった州選抜選手は6ヶ月後、16人に増加。彼らへの指導は今後も続けていくので、あの子たちは今よりももっともっと上手くなれる。そう確信しているよ。」
宮崎 隆司