潜在成長率は技術進歩とともに低下する

そうなると、日本のように既に洋服屋がミシンを持っている国では、途上国と比べて潜在成長率が低いという事にならざるを得ません。今のミシンを最新式のミシンに買い替えたとしても、労働生産性は爆発的には上がらないからです。

日本も、高度成長期には各社がミシンを導入して労働生産性が爆発的に上がっていたので、高い成長が可能だったのですが、ミシンが行き渡るとともに潜在成長率が下がってきたわけですね。

今の途上国も、先進国で使われている技術と似たような水準までは容易に使えるようになるでしょうから、先進国より高い成長を続ける事は可能でしょうが、多くの工場がミシン等を導入し終わると、次第に成長率が低下していく事は免れないでしょう。

経済成長による経済のサービス化も潜在成長率を引き下げる

経済が成長すると、産業構造が変化します。農業から工業へ、工業からサービス業へ、というわけですね。女性の購入品の変化を考えてみましょう。戦後の食糧難の時代には、食べ物が重要でしたが、食べ物に困らないようになると、次は洋服が欲しくなります。洋服もある程度持てるようになると、次は美容院に行きたくなります。

それに応じて産業の方も、生産品目を変えていきます。それに伴なって労働者も、農業に集まっていたのが製造業に集まるようになり、サービス業に移っていくわけですね。

問題は、洋服屋はミシンの導入で労働生産性を高めることが出来るけれども、美容院は手作業なので労働生産性が高まらない、という事です。経済の中心が洋服屋である間は労働生産性が大きく向上するので高い成長が可能ですが、経済の中心が美容院に移ると経済全体としての労働生産性が向上しなくなり、潜在成長率が低下してくるわけです。