固定残業代制度のリスクとは

このような固定残業代制度にはリスクはないのでしょうか。

残業代請求の事件では、固定残業代制度の有効性が争われることが一定数あります。

固定残業代制度が仮に無効となってしまうと、割増率を乗じる基礎単価が上がることに加え、支払ったはずの残業手当が残業代としての支払ではないということなので、高い基礎単価で計算した残業代をさらに払わなければならないという、いわゆる「ダブルパンチ」を受ける可能性があります。

固定残業代制度の有効性は、さまざま議論されていますが、最も重要なのは、明確区分性です。基本給部分と割増賃金部分が制度の仕組み上、労働者にとっても明確に区分されて判断できる必要があります。

また、あまりに不合理な固定残業代制度の場合、合意自体が無効とされてしまう旨を判断した裁判例もあります。

既に勤務している労働者の条件を変更する場合には、不利益変更にあたらないかという観点からも検討する必要があります。