2022年4月に施行となる年金制度改正法によって、在職老齢年金の支給停止の基準が変わります。
人生100年時代といわれる中、「できるだけ長く働きたい」と考える人も増えていますから、在職老齢年金制度を知っておくことは有益でしょう。支給停止となる仕組みや繰下げ受給との関係など、在職老齢年金についての理解を深めましょう。
2022年4月の年金改正で在職老齢年金はどう変わる?
2020年6月5日に公布された「年金制度改正法」は、2022年4月1日から施行されます。その中の在職老齢年金制度の見直しについてくわしく確認していきましょう。
在職老齢年金とは
老齢厚生年金を受給している人が、在職して厚生年金保険の被保険者となっている場合、「年金額(月額)と報酬(月給・賞与)」に応じて、年金の一部あるいは全部が支給停止となることがあります。これを「在職老齢年金」といいます。
在職老齢年金は、60~64歳までと65歳以降では支給停止となる基準額が異なります。
「年金の月額(基本月額※1)」と「報酬(総報酬月額相当額※2)」を足した金額が基準額以下であれば年金は全額支給され、基準額を超えると、年金の一部または全部が支給停止となる仕組みです。
※1:60~64歳は特別支給の老齢厚生(退職共済)年金の月額・65歳以降は老齢厚生(退職共済)年金(報酬比例部分)の月額
※2:その月の標準報酬月額+その月以前の1年間の標準賞与額の総額÷12
今回の改正で変わるのは60~64歳までの支給停止となる基準額で、現行の28万円から47万円となります。47万円は65歳以降と基準額と同じです。
60~64歳までの老齢厚生年金は「特別支給の老齢厚生年金」といい、男性は昭和36年4月2日、女性は昭和41年4月2日以後に生まれた人からはもらえなくなるため、「男性は2025年度まで、女性は2030年度まで」の経過的な制度になります。
そのため、今回の改正による影響は限定的といえるでしょう。
在職定時改定の導入
在職中の年金受給に関して、もう一つ改正がありました。在職定時改定の導入です。
これまで65歳以上の在職中の老齢厚生年金受給者は、厚生年金保険料を納めても、退職後または70歳になって厚生年金被保険者の資格を喪失するまでは年金額に反映されませんでした。
今回の改正によって、在職中であっても毎年1回10月に改定を行い、年金額に反映されることとなりました。就労を継続した効果が退職を待たずに得られることは、働きがいにつながるでしょう。