「受託者」(委託者の財産を託される人)
信託行為の定めに従い、受益者のためにのみ、信託財産の管理または処分及びその他の信託目的達成のために必要な行為をすべき義務を負う者
「受益者」(信託財産から利益を得る人)
委託者の信託行為の定めにより、受益権が与えられる者
本件のケースであれば、父親を委託者、相談者を受託者として、実家の土地建物と貸家について民事信託を設定することが考えられます。この場合、父親を受益者と定めれば、父親は実家の土地建物に住みつづけることができますし、貸家から得られる賃料収入も父親の収入とすることができます。
そして、信託財産の所有名義は受託者に移るので、実家の土地建物と貸家の管理・処分は、受託者の名義で行うことができます。
本件の場合、民事信託を設定した後であれば、仮に父親が認知症になったとしても、相談者は、信託行為の定めにしたがって、自分の名前で本件の不動産を管理・処分することができます。そのため、父親が認知症で判断能力を失ったとしても、不動産の管理・処分について支障が生じることはありません。
仮に民事信託を設定していない場合、父親が認知症になってしまうと、本件不動産の所有者が判断能力を失うという事態になってしまいます。
たとえば、本件不動産について、不動産管理会社と業務委託契約を締結しようとしても、所有者である父親には判断能力がないため、父親の名義で有効に契約を締結することができません。