”秘伝のエクセル”だらけの日本

日本政府のデジタル化でも、さまざまな問題が錯綜しています。たとえば、コロナ接触確認アプリCOCOAの不具合が話題となりましたが、そもそもコロナ感染を自己申告するという、その“設計思想"が正しいのか。

国と地方自治体の横断的なシステム構築でも、そもそも現状の国と自治体の役割・機能分担が最適解なのか。ここでも同様に言えることは、単にデジタルテクノロジーの問題だけではないということです。

ここで唐突に思いだすのが、システム開発などでよく聞く“秘伝のエクセル"の笑い話です。この笑い話は、システム開発において「そこのロジックは秘伝のエクセルを踏襲して」と言われ、計算式を分析・確認すると、「ここは現状とは違う」「そこも最近、変わった」というのが出てくるという落ちです。

日本にはそこら中に、先祖伝来の秘伝のエクセルがいっぱいあります。つまり前例踏襲・思考停止したなかで生成されたブラックボックスが山ほどある。テクノロジーの問題だけでなく、社会システムや価値観を含めてです。つまり、デジタル化の前提となる標準化があまりにも進んでいない。そして、これらは経営層だけの問題ではないと思います。

少し大げさに言えば、日本に必要なことは「デジタル化で社会を変える」ことではなく、「まずデジタル化を必要とする社会に変える」ことだという気さえします。

いずれにしろ、2022年はブラックボックスが少しでも解消された、見通しの良い社会につながる1年になることを願っています。

参考資料

榎本 洋