ガソリンスタンドには値下げ競争のインセンティブあり

そんな時、ガソリンスタンドには値下げをしてライバルから客を奪ってくるというインセンティブが存在します。ガソリンは、各社の間で製品差別化がしにくいので、1円でも安い方に客が大きく流れる可能性が高いからです。

売値を90円に値下げして粗利が40円に減ったとしても、売上数量が250リットル以上になるのであれば赤字が回避できるわけで、値下げのインセンティブは大きいと言えるでしょう。

問題は、ライバルも同じことを考える可能性が高いということです。ライバルも値下げをすると、お互いに粗利が減るだけで、販売数量はそれほど増えないかもしれません。

牛丼チェーンの値下げ競争であれば、ラーメン店から客を奪ってくることができるかもしれませんが、ガソリンスタンドの値下げ競争ではそうした効果が見込みにくいからです。

儲かっている時であれば、値下げ合戦による不毛な消耗を挑む必要はないので、お互いに利益を享受して平和な日が続くのでしょうが、赤字に転落するとそうも言っておられず、「背に腹はかえられない」と考えて値下げする会社が出てくるかもしれません。

しかし、そうなると値下げ合戦が止まらない可能性もあります。99円に下げると98円で対抗され、97円で対抗すると96円で対抗される、といった繰り返しが予想されるからです。52円でもまだ、51円で対抗されるでしょう。50円で対抗するのは意味がないので、51円で客を半分ずつ分け合うところで値下げ合戦が決着する、というわけですね。