日本の新自由主義はそもそもニセモノだった

ものすごく大雑把にいうと、製造業という多くの人々が参加可能な産業が衰退して、開発・知財、金融やITといった分野が花形産業になれば、どうしても格差は拡大します。“給料の高い仕事"が少なくなるわけですから。

つまり格差拡大を前提とすると「中間層復活」は絵に描いた餅ということです。目指すべき政策目標は「中間層復活」ではなく、最低限の生活が可能な「最低保証」ではないでしょうか。さきほどの負の所得税もBI(ベーシックインカム)も、そういった方向性を持っています。

最後に脳科学者の茂木健一郎氏のユーチューブチャンネルの大変興味深い発言を紹介します。動画のタイトルは「日本型の『新自由主義』はそもそもニセモノだった」。以下・引用します。

日本の新自由主義は「実際には新自由主義でもなんでもなくて、“不自由主義"だった」。そして「残念なことに、既得権益の構造を強めるだけになってしまった」。

さらに「GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)のような世界で活躍する企業を生み出せなかった。非常に残念な、改革の失敗だった」とも語っています。

個人的には、この茂木氏の分析には全面的に賛成します。ただ、茂木氏が総理の政策転換を“歓迎"するとしているのは微妙なところですね。

ただでさえ分かりづらい話を、論点整理もせず改変して何か新しいものが生まれるのでしょうか。ちょっと、そんな気もしました。

参考資料

岸田文雄氏に聞く「所得倍増計画」の全貌、分配でアベノミクスを“進化”(ダイヤモンド・オンライン、2021年9月8日)
茂木健一郎氏、日本型の新自由主義は失敗 岸田首相の政策転換を「歓迎」(日刊スポーツ、2021年10月7日)
日本型の「新自由主義」はそもそもニセモノだった(茂木健一郎のもぎけんチャンネル、2021年10月7日)

榎本 洋