そして、大人社会の勝ち負け論争が、子ども社会や心理に与える影響も大きいことを自覚すべきでしょう。負けたら人生が終わりになる、弱者は努力を怠っているという考え方に偏ってしまう恐れもあるからです。

勝ち負けだけで価値判断するのは多様性が求められる今の時代に逆行しており、前時代的と言わざるを得ません。勝ち組になることは悪いことではありませんが、人生の全てをその一言で済ましてしまうのは少々乱暴でしょう。

安易な「二極化論争」がもたらすもの

所得や子どもの学力などで二極化が進んでいることが指摘されて久しく、マスメディアでは多くの場合、そこに「勝ち組」と「負け組」が存在するというような取り上げ方をします。

「勝ち組」「負け組」は非常に分かりやすく目を引く表現ではありますが、言葉の力は多くの人が思う以上に強力です。素直に受け止めてしまう子ども、そして子育て中の親への影響は避けられません。

社会全体がコロナ禍で息苦しい雰囲気に包まれている中では、二極化を煽るような言葉よりも二極化の加速を緩和する方法を考える必要性が高まっているのではないでしょうか。

参考資料

ユーキャン流行語大賞 第23回 2006年 授賞語(自由国民社)
階層意識としての勝ち組・負け組 準拠集団に関するインターネット調査結果の分析(2)(大阪経大論集 第64巻第3号・2013年9月)

中山 まち子