企業が倒産すると、まだ使える設備機械がスクラップ業者に買い叩かれるかもしれません。企業が持つノウハウや信用などは、バランスシートには載っていませんが貴重な財産であり、それが倒産すると雲散霧消してしまうのも大変もったいないことです。

筆者は常々、日本経済にとって好ましいことは何かを考えているわけですが、そうした観点からは企業の倒産はまことに好ましくないわけですね。

企業が倒産しても投資家の損失は限定的

企業が倒産すると、上記のように多方面に多大な損害が生じるわけですが、投資家が被る損害は限定的です。彼らが投資した金額を失うだけですから。

一方で、企業が儲けた分はすべて投資家のものとなりますから、投資家は企業が儲けることを切望しています。つまり、彼らは企業が現預金を減らすことを望んでいるわけです。

「企業は現預金を使って投資をして大いに儲けるべきだ。投資機会がないならば、現預金で銀行借入を返済して金利負担を軽くすべきだ」「でも、本当にやってほしいのは、現預金を使って配当を増やすとか自社株買いをするとか、株主に直接貢献することだ」というわけですね。

配当が増えれば投資額が回収できますから、企業が倒産した場合の損失が限定され、倒産しなければ利益が丸儲けになるわけです。自社株買いによって株価が2倍になれば、半分売って投資額を回収してしまえば、あとは企業が倒産しても構わないし、倒産しなければ丸儲けです。

経営者がどう判断するかが問題

問題は、企業経営者が日本経済のことを考えて意思決定をするわけではないということです。彼らが考えるのは、株主の利益と従業員の雇用の確保と自分の保身でしょう。