バブル崩壊までの日本企業は、従業員の共同体と呼ばれていたほど従業員のことを考え、株主のことは考えていませんでした。バブル崩壊後に米国流の考え方が流行り出し、企業は株主が金儲けのために作ったものだから、株主の意向を尊重すべき、という考え方が広まりました。経営者がそのバランスをどう考えるかですね。

ちなみに、経営者の保身という観点からは倒産防止が望ましいということでしょうが、後述の極端な例のような場合にはその限りではなさそうです。

投資家が極端に利益を追求すると人々が不幸になる

投資家が極端に利益を追求すると何が起きるのか、考えてみましょう。まず、金儲けの上手な人を社長に選んで、こう言うでしょう。「頑張って儲けて、株価を上げてくれ。株価が上がったら、巨額のボーナスを払うから」と。

そうなると、社長は頑張って稼ぎ、現預金を使って自社株の買い戻しをするでしょう。流通している自社株の数が減れば、利益が同じでも1株あたりの利益が増えるので、株価は上がるでしょう。

そうなれば、社長は莫大なボーナスを貰うので、その後で会社が倒産しても知ったことではありません。倒産しなければ、翌期も同じことをすれば良いわけですね。

株主も、株価が2倍になったところで持ち株を半分売れば、あとはその後に会社が倒産しても知ったことではありません。倒産しなければ、手元に残っている株は丸儲けですから。

このように、株主が極端に利益を追求すると、企業が倒産しやすくなり、多方面に多大な被害が生じる可能性が高くなるわけです。そうした企業が増えないことを祈るばかりです。

本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。

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塚崎 公義