潜在成長率は国により時代により様々
途上国では手で畑を耕しています。そこにトラクターが導入されると、農業労働者一人当たりの生産力が何倍にもなります。余った労働者は都会に働きに行き、ミシンを作ります。
そうなると、洋服屋が手作業ではなくミシンを使って洋服を作れるようになるので、洋服の生産量が爆発的に増えます。こうして、途上国では失業者が増えも減りもせずに高度成長が可能になるのです。
一方、日本では既に農家はトラクターを持っていますから、最新式のトラクターに買い替えたとしても一人当たりの生産量はそれほど増えません。洋服屋についても同様です。
したがって、労働者一人当たりの生産量はそれほど増えず、ゼロ成長でも概ね前年と同数の労働者が必要となるので、失業者は少ししか増えません。
そこで日本では、毎年1%程度の経済成長があれば失業者は増えず、それ以上の成長だと労働力不足になってしまう、というわけですね。
本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。
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塚崎 公義