損害賠償の時効を止められれば・・・

バレにくく、バレても刑法の罪も社会的制裁も軽いのであれば、不正を思いとどまらせることは容易ではありません。考えられるのは、株主代表訴訟で巨額の賠償を請求することが抑止力となるかもしれない、ということですが、それも容易ではないかもしれません。最初に不正をした人が一番悪いのに、その人は時効で何も追求されない可能性があるからです。

後任者は、前任者の不正を公表するか自分も引き継ぐかの選択を迫られるわけですが、公表すれば批判の矢面に立つのは自分であって、しかも社内的には前任者を裏切ったといった評価を受けかねないわけです。そんな後任者に巨額の損害賠償を請求しても、抑止力としては今ひとつでしょう。

最初に不正を始めた人に対する損害賠償請求については時効制度を適用しない、といったことができれば良いのでしょうが、難しいでしょうね。

せいぜい、後任者が巨額の賠償請求を恐れて前任者を告発することを期待し、前任者が告発されることを恐れて悪事を思いとどまる、といったことを期待するしかなさそうです。

あとは、人々の正義感に期待するということでしょうか。共同体意識にはメリットも大きいので、これが崩れることは期待しませんが、共同体意識を上回るような正義感を当事者が持つようになれば良いですね。

本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。

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塚崎 公義