品質不正がなぜ行われるのか、当事者の思考回路を想像してみると、思い止まらせるのは容易ではなさそうだ、と筆者(塚崎公義)は考えています。

防止策を考えるには当事者の思考回路を知るべき

泥棒を減らすには、なぜ泥棒が盗みをはたらいたのか、という思考回路を知る必要があります。「金がなくて腹が減ったから」と言われた時に、「悪人は言い訳をするな」と叱る選択肢もありますが、「それなら生活保護を充実させれば泥棒は減るはずだ」と考える方が生産的でしょう。

本稿は、品質不正(および粉飾決算等の不正、以下同様)を行った人の思考回路を考えることによって、防止策を考えてみよう、というものです。決して悪人の言い訳を擁護したり正当化したりするわけではなく、怒っているが故に真剣に防止策を考えているので、誤解のないようにお願いします。筆者は元銀行員なので、品質不正はともかくとして、粉飾決算は絶対に許したくないのです。

バレないことが悪事をはたらくインセンティブに

時として不正行為がバレて話題となりますが、実際にはバレていない不正行為が非常に多いのだろう、と筆者は考えています。そう考える根拠は、「バレた不正行為が何十年も前から行われていた」というニュースを耳にするからです。

つまり、不正行為は、何十年もバレない可能性があるわけで、現在行われている多くの不正行為が今後数十年の間にバレて話題になっていくのだろう、と考えるのが自然だからです。

不正行為がバレにくいということは、悪事を働く人にとって非常に重要なインセンティブとなるわけです。悪事がすぐにバレるとわかっていれば、不正をはたらく人はいませんから。