2017年、当時の安倍首相を議長とする「人生100年時代構想会議」が発足したあたりから、一般的に耳にする機会が多くなった『人生100年時代』という言葉。
当時『人生100年時代』という言葉を初めて聞いた私は、なかなか耳になじまず違和感を抱いていたように記憶しています。
しかし、今となってはどうでしょうか。
ニュースなどで、著名な方が70代や80代で亡くなられた、というような訃報を聞くと、『まだ若いのに……』と感じてしまうのは、私だけではないと思います。
みなさんもおそらく実感し始めた『人生100年時代』。その1年生ともいえる60代ですが、やはり多くの人が気になるのは老後の生活資金ですよね。
私は以前、生命保険会社に勤務し、数多くのお客さまから老後のお金の相談を受けてきました。その経験もふまえ、定年後60代の貯蓄事情について確認しながら、老後のお金について考えていきたいと思います。
60代世帯の貯蓄事情、ピンとキリ
さっそく金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査] 令和2年調査結果」から、60代の貯蓄に関するデータを見ていきましょう。
60歳代・二人以上世帯「金融資産保有額」
(金融資産を保有していない世帯を含む)
平均:1745万円
中央値:875万円
◆貯蓄額の分布◆
- 金融資産非保有:18.3%
- 100万円未満:3.5%
- 100~200万円未満:4.0%
- 200~300万円未満:4.0%
- 300~400万円未満:3.3%
- 400~500万円未満:4.0%
- 500~700万円未満:5.3%
- 700~1000万円未満:7.5%
- 1000~1500万円未満:7.5%
- 1500~2000万円未満:6.3%
- 2000~3000万円未満:13.3%
- 3000万円以上:19.6%
- 無回答:3.3%
平均値は、上位の大きな数値に影響されて引き上げられる傾向があるため、中央値のほうがより実態を反映しているといわれています。
2019年に話題となった「老後2000万円問題」を覚えていらっしゃる人も多いかと思います。
この「2000万円」という金額をひとつの目安として結果をみてみると、全体の32.9%がこの金額以上の金融資産を保有していることになります。
その反面、中央値が875万円、18.3%が金融資産を保有していないという事実をふまえると、貯金の「ピン(ある世帯)」と「キリ(ない世帯)」の格差が見てとれる結果ともいえるのではないでしょうか。