ただし、この退職金額は、あくまでも標準者退職金をもとにした試算の結果です。転職などで勤続年数が少ない場合や、勤続年数が長い場合でも思うように昇進できなかった場合なども含めると、すべての人に当てはまるものではない点には留意する必要があるでしょう。

また、退職金制度を設けるかどうかは企業の裁量に任されています。よって、勤続年数が長い場合でも「退職金がもらえない」会社もあります。

ご自身が受け取る退職金がだいたいどのくらいになりそうか、そもそも勤務先に退職金制度はあるのか、事前に把握しておくことは、長期的なマネープランを作るうえでとても大切なことです。

退職金で老後は安泰なのか!?

さて、2019年に話題となったいわゆる「老後2000万円」問題をきっかけに、老後に向けた貯蓄の目標額として2000万円を設定された方もいらっしゃるでしょう。

さきほどの調査結果では、大学卒では35年以上、高校卒(総合職)であれば42年の勤続年数で、「退職金2000万円」が期待できそうである、ということが分かりました。

では、退職金が2000万円あれば、それで老後は本当に安泰といえるのでしょうか。

「老後2000万円問題」

「モデルケースとなる高齢無職世帯が30年間老後を過ごす場合に必要となる生活費は、公的年金だけでは2000万円不足する」というショッキングな内容で世間の注目を集めました。

「金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書『高齢社会における資産形成・管理』」より、この「2000万円」という金額の根拠を見ていきます。

この報告書では「65歳以上の夫、60歳以上の妻」の夫婦のみ無職世帯をモデルケースとして、老後30年で必要となる生活費が試算されています。下記が、この世帯のひと月の収支です。

モデルケース高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上を想定)

月々の実収入(主に年金):20万9198円
月々の実支出(主に食費):26万3718円
月々の赤字:約5万5000円

老後必要額=5万5000×12か月×30年(老後30年と仮定)=1980万円(約2000万円)

この試算どおりの支出でおさまるのであれば、退職金2000万円で、老後の生活費には困らないといえそうです。

「じゃあ、我が家も大丈夫かな」と胸をなでおろした方もいらっしゃるでしょう。そこで少し注意が必要です。この「2000万円」の試算には、いくつかの盲点があるのです。