昨今のコロナ禍のような有事では、何かにつけて、公務員のみなさんの激務ぶりを目の当たりする機会が増えます。

社会貢献度の高さや地域密着型の仕事に魅力を感じ、公務員を目指す方も多くいらっしゃるでしょう。親御さんの中には、給与や雇用面での安定性から、「我が子についてほしい職業」として公務員を挙げる方も多いようですね。

さて、民間企業の会社員と比べて景気に左右されにくい、というイメージが強い官公庁勤務。毎月の給与はさることながら、「退職金」の額は一体どのくらいなのか、ちょっと気になる方もいらっしゃるかと思います。

そこで今回は、国家公務員・地方公務員の退職金事情をながめつつ、老後資金の準備についても考えていきましょう。

国家公務員の退職金はどのくらい?

まずは国家公務員の退職金事情から見ていきます。

内閣官房内閣人事局の「退職手当の支給状況(令和元年度退職者)」から、「退職理由別退職手当受給者数及び退職手当平均支給額」を抜粋します。

常勤職員

  • 定年:2090万6000円
  • 応募認定:2588万1000円
  • 自己都合:316万1000円
  • その他:201万6000円

うち行政職俸給表(一)適用者

  • 定年:2140万8000円
  • 応募認定:2278万円
  • 自己都合:362万7000円
  • その他:265万8000円

退職事由が「定年」や早期退職制度に基づく「応募認定」の場合、受け取る退職金は2000万円を超えていますね。

次に地方公務員の退職金を見てみましょう。

地方公務員の退職金はどのくらい?

続いて、地方公務員の退職金事情を見ていきます。

「平成31年地方公務員給与の実態(表-24 団体区分別,年度別一般職員の勤続25年以上の定年又は応募認定退職者1人当たり退職手当額)」から、平成30年度の金額を抜粋します。

※前ページの国家公務員の退職金は令和元年度の値で完全に同一条件とはいえませんが、比較の参考となるでしょう。

応募認定退職:56歳

  • 全地方公共団体…2125万1000円
  • 都道府県…2147万4000円
  • 指定都市…2174万1000円
  • 市…2120万5000円
  • 町村…2000万2000円

応募認定退職:58歳

  • 全地方公共団体…2141万6000円
  • 都道府県…2150万4000円
  • 指定都市…2111万6000円
  • 市…2154万3000円
  • 町村…2068万1000円

定年等退職:60歳

  • 全地方公共団体…2133万円
  • 都道府県…2183万9000円
  • 指定都市…2119万3000円
  • 市…2126万8000円
  • 町村…2008万1000円

地方公務員の場合も、退職事由が「定年」や「応募認定」の場合であれば退職金は2000万円超えを期待できそうです。

上記のデータからは、国家公務員・地方公務員いずれも、定年退職や、応募認定退職の場合は、まとまった退職金を受け取っている、ということができそうです。

では、仮に「2000万円」の退職金を受け取ることができれば、不安のない老後を迎えることができそうでしょうか。次で考えていきます。

公務員「退職金」だけで老後は安泰か

さて、2019年に金融庁のレポートに端を発した「老後2000万円問題」がまだ記憶に新しいという方も多いでしょう。では、仮に「2000万円」の退職金を受け取ることができれば、老後の生活は安泰といえるのでしょうか。

ここでクローズアップされた「2000万円」の根拠について触れていきます。

「老後2000万円問題」を考える

金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」では、この「2000万円」の試算を行う際にモデルケースとなった世帯の、ひと月の収支が示されています。

同資料内の「第 21 回市場ワーキング・グループ 厚生労働省資料」から抜粋していきます。

モデルケース
「夫65歳以上、妻60歳以上の無職高齢夫婦世帯」

  • 実収入…20万9198円
  • 実支出…26万3718万円

この世帯の毎月の収支を計算すると、毎月約5万5000円の赤字になります。老後が約30年間続いたと仮定すると、

「5万5000円×12カ月×30年=1980万円」

よって、およそ2000万円が必要となる、という計算なのです。ただし、あくまでもモデルケースによる概算から導き出された金額である点には注意が必要です。

さらにこの試算には意外な「落とし穴」があります。次で詳しく触れていきましょう。

「老後2000万円」の”意外”な落とし穴

先ほど触れた「老後2000万円」の内訳については、意外な落とし穴があります。その中でも、「住居費」と「介護費用」について詳しく見ていきます。

住居費

この試算では、住居費が約1万4000円で計算されています。

これは「持ち家」であることを前提に計算されたものです。老後も賃貸物件に住み続ける世帯であれば、家賃との差額を、「2000万円」以外に準備していく必要があります。

介護費用

介護が必要となった場合にかかるお金も、この2000万円には含まれていません。

公的介護保険を利用する場合は、サービス利用料は1~3割負担に軽減されます。ただし、要介護状態に応じて設けられる区分によって、1カ月あたりの利用限度額が定められており、限度額を超えた分は自己負担となります。

また、有料老人ホームに入居を検討する場合は、数百万円以上の費用が必要となることが考えられます。そのうえ、月々の利用料がかかるケースがほとんどです。

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交通の便が悪いところにお住まいであれば、頻繁にタクシーを利用することもあり得ます。また、家事分担をする同居家族がいない場合は、老後の比較的早い段階で家事をアウトソーシングする必要も生じる可能性がありますね。

さらに、趣味のための費用や、友人との交際費、さらには「孫費用」といった、人生を豊かに楽しくするための必要経費も、しっかりと準備しておきたい、という方も多いでしょう。

ゆたかな老後を見据えたお金の準備は、官民問わずしっかり進めていきたいものです。

老後資金は「退職金任せ」から「自分で作る」時代に。

公務員に限らず、お勤めの方にとって退職金は老後の生活をささえる大切な柱といえるでしょう。

民間企業の場合、退職金そのものがない会社もありますし、退職金制度そのものを見直す企業も増加中です。また、公務員の退職金は民間企業の退職金相場と大きくかけ離れることがないよう、定期的に見直しが行われています。

多くの民間企業が苦戦を強いられる今、官民ともに「退職金だけ」に過剰な期待を持つことは、あまりお勧めできないでしょう。

そんな今こそ、「老後資金は自力で作る」という発想を持つチャンスかもしれません。

「人生100年時代」が近づいています。長い老後を見据えたお金の準備は、先手先手で進めていきたいものですね。

「いまの貯蓄ペースで老後は安心できそうか」
「自分に合った金融商品の選び方が分からない…」

そんな疑問や悩みは、ぜひ「マネーの専門家」にぶつけてみましょう。あなたとご家族に寄り添うお金の守り方・育て方が見つかるきっかけになるかもしれません。

参考資料

谷口 裕梨「公務員の退職金は3000万円超え?実際にどれくらいいるの?」(LIMO)
佐藤 雄基「みんなの憧れ「公務員の退職金」民間より高いのは本当か」(LIMO)
内閣官房内閣人事局「退職手当の支給状況(令和元年度退職者)」
総務省「平成31年地方公務員給与の実態」
金融庁「金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書『高齢社会における資産形成・管理』」
金融庁「厚生労働省 提出資料 iDeCoを始めとした私的年金の現状と課題」
マネイロ「資産運用はじめてガイド」