もし離婚したら、妻は夫の年金をどの程度もらえるのでしょうか?
これをあらかじめ知っておくことはとても重要といえます。「年金分割制度」を活用することで、将来受給できる年金額が大きく変わってくるからです。
対象となる年金の種類や請求期限、分割の仕方など、妻が夫の年金を受け取れる「年金分割制度」の基本的な内容を紹介します。
そもそも「年金分割制度」とは?
離婚する際に、婚姻中の年金を夫婦で分割するのが「年金分割制度」です。離婚時には貯蓄など夫婦が持つ財産を分け合いますが、年金分割制度により年金も分割されることになります。
専業主婦の場合は特に離婚後の生活設計が大変です。まずは制度そのものをよく理解し、いざという時のために知識を身につけておきましょう。
もらえる年金の種類や対象となる期間、いつまでに申請する必要があるかなど、離婚時の年金分割制度について事前確認しておくことが大切です。
分割の対象となるのは年金額そのものではなく、年金加入記録(標準報酬月額・標準賞与額などの標準報酬)です。将来受給できる年金は標準報酬に基づき計算されていて、会社員や公務員として厚生年金保険料を支払った標準報酬は離婚時に分割することができます。
分割によって標準報酬の一定の割合が、多い側(たとえば夫)から少ない側(たとえば妻)へと移ることになります。標準報酬が多いと、将来受給できる年金も増えることになるのです。
年金分割制度の対象は厚生年金のみ
年金分割制度はもともと夫婦間の不公平さをカバーするものなので、20歳以上の全国民が加入する国民年金は対象にならず、適用されるのは厚生年金だけです。そのため、夫が厚生年金に加入していない自営業や個人事業主の場合は利用できません。
仮に会社員の夫と専業主婦の妻の場合、夫は「第2号披保険者」として厚生年金保険料を支払うことで老後に厚生年金を受給できます。
一方で、扶養されていた「第3号披保険者」である妻は厚生年金保険料を支払っていないため、老後に厚生年金を受け取ることはできません。
妻は専業主婦として家事や子育てを担ってきたにもかかわらず、その実績が評価されないことになってしまいます。その不公平さを解消するため、離婚の際は夫が厚生年金保険料を支払った分を夫婦で分け合う仕組みです。
なお、年金分割はあくまでも夫婦間の不公平をなくすための制度であり、妻の標準報酬の方が多い場合は夫に分ける形になります。第3号被保険者が専業主婦でなく「専業主夫」であれば妻が夫に分割することになりますが、制度の内容に変わりはありません。
分け方は「合意分割」と「3号分割」の2種類
年金分割制度としては、「合意分割」と「3号分割」があります。いずれも分割の対象となるのは、婚姻期間中における標準報酬です。
「合意分割」は、婚姻期間中に夫も妻も働き厚生年金保険料を支払っていた場合の制度です。双方の合意または裁判手続きなどにより標準報酬を分割し、婚姻期間における夫婦の標準報酬を合計して分け合います。
この「合意分割」では、標準報酬の少ない側が、合計の50%を上限として分割を請求することができます。つまり、妻が働いていても夫と比べて標準報酬が少なければ、合意分割制度を使うことでその差を縮めることができるのです。
一方で「3号分割」は、婚姻中に妻が第3号披保険者として夫に扶養されていれば、標準報酬を2分の1に分割できる制度です。双方の合意は必要なく、妻の請求だけで2分の1の分割となることが定められています。
ただ、「3号分割」は制度が導入された2008年4月以降からが対象のため、それ以前の期間については第3号披保険者であっても「合意分割」による分割が適用されます。婚姻期間が導入時期をまたぎ両方に該当する場合は、それぞれの制度を使い合計して請求することができます。
結婚した時には妻も働いて厚生年金保険料を支払っており、その後専業主婦になった場合は、働いていた期間は「合意分割」、専業主婦の期間は「3号分割」となります。
離婚後2年以内の申請を忘れずに
年金分割はあくまでも婚姻期間における標準報酬を配偶者にも公平に分ける制度であり、結婚前や離婚後の夫の標準報酬実績は対象とはなりません。
また、「合意分割」「3号分割」ともに請求期限があり、どちらも「離婚後2年以内」に申請しなければ請求できなくなります。離婚したからといって自動的に分割されるのではないため、自分から行動を起こすことが必要です。
場合によっては分割請求期限が延長される特例などもあるため、年金分割制度の内容を詳しく知りたい方は最寄りの年金事務所にお問い合わせください。
まとめ
「年金分割制度」では、分割後の標準報酬に基づいて将来の年金額が決まるものの、実際にもらえるのは年金受給が始まってからです。分割された年金が受け取れるようになっても、あくまでも1人分のため、老後の生活に充分な金額とはいえないかもしれません。
可能であれば離婚後に働いて、自分自身が厚生年金に加入することで、将来の年金受給額を増やすことができます。年金分割制度を活用した後も、将来への備えを常に意識しておくことが大切といえるでしょう。
