年金分割制度の対象は厚生年金のみ

年金分割制度はもともと夫婦間の不公平さをカバーするものなので、20歳以上の全国民が加入する国民年金は対象にならず、適用されるのは厚生年金だけです。そのため、夫が厚生年金に加入していない自営業や個人事業主の場合は利用できません。

仮に会社員の夫と専業主婦の妻の場合、夫は「第2号披保険者」として厚生年金保険料を支払うことで老後に厚生年金を受給できます。

一方で、扶養されていた「第3号披保険者」である妻は厚生年金保険料を支払っていないため、老後に厚生年金を受け取ることはできません。

妻は専業主婦として家事や子育てを担ってきたにもかかわらず、その実績が評価されないことになってしまいます。その不公平さを解消するため、離婚の際は夫が厚生年金保険料を支払った分を夫婦で分け合う仕組みです。

なお、年金分割はあくまでも夫婦間の不公平をなくすための制度であり、妻の標準報酬の方が多い場合は夫に分ける形になります。第3号被保険者が専業主婦でなく「専業主夫」であれば妻が夫に分割することになりますが、制度の内容に変わりはありません。

分け方は「合意分割」と「3号分割」の2種類

年金分割制度としては、「合意分割」と「3号分割」があります。いずれも分割の対象となるのは、婚姻期間中における標準報酬です。

「合意分割」は、婚姻期間中に夫も妻も働き厚生年金保険料を支払っていた場合の制度です。双方の合意または裁判手続きなどにより標準報酬を分割し、婚姻期間における夫婦の標準報酬を合計して分け合います。

この「合意分割」では、標準報酬の少ない側が、合計の50%を上限として分割を請求することができます。つまり、妻が働いていても夫と比べて標準報酬が少なければ、合意分割制度を使うことでその差を縮めることができるのです。