日本の海洋資源「燃える氷・メタンハイドレート」から水素を造る

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この採掘技術の開発には、海底鉱物掘削の技術を有する三菱重工業グループの三菱造船も乗り出しており、掘り出したメタンハイドレートを船に吸い上げることを計画しています。

水素を安価に製造する

新エネルギーとして注目される水素を製造する方法は、石油や天然ガスに含まれるメタンなどの炭化水素を水蒸気と反応させて水素と二酸化炭素に分解する方法(水蒸気改質法)が主力です。

この方法は、すでに技術的に確立されていますが、我が国は石油や天然ガスを輸入しなければなりませんので、その安定確保や価格面、また地政学リスクという問題がありました。

一方、メタンガスは石油や石炭に比べ燃焼時の二酸化炭素排出量がおよそ半分であるため、地球温暖化対策としても有効な新エネルギー源であるとされ、また、水素製造のプロセスで発生する二酸化炭素が少ない利点を持っています。

3月22日に経済産業省から発表された「今後の水素政策の課題と対応の方向性中間整理(案)」において、政府は水素の導入量を2050年に2000万トン程度に拡大する方針を示しています。

しかし、そのためには価格を現状の1ノルマル立方メートル(大気圧下、0℃の体積)あたり100円程度を、将来的には20円に引き下げなければならないようです。ここに日本近海に豊富にあるメタンハイドレートを活用できるようになれば、水素の安価な供給も実現可能になるでしょう。

まとめ:メタンハイドレート採掘の意義

メタンハイドレート採掘の意義については上述のとおり、燃料としてだけではなく、水素製造の原料として使えることにあります。水素によるエネルギー獲得手段は、現状ではコスト競争力はないかもしれませんが、ここに今から投資しておくことは、中長期的に我が国にとって大きな財産になるのは間違いありません。

メタン自体は強力な温室効果ガスでもあり、同量の二酸化炭素の21〜72倍の温室効果をもたらすとされています。火山ガスであるメタンは、世界最大の火山帯である日本列島および近海から常に大量に放出され続けていることに加え、気温が上昇すれば海底や永久凍土中のメタンハイドレートからメタンが放出されることも懸念されます。

そこで、二酸化炭素排出量の少ないメタンハイドレートを採掘し、積極的に燃焼させるか、水素製造に使うべきだとする意見もあります。メタンハイドレート採掘、その利用については現時点では商業化されていませんが、政府のメタンハイドレート開発実施検討会の計画が早急に進むことを期待しましょう。

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参考資料

和田 眞

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執筆者

徳島大学名誉教授、元副学長(教育担当)・理事。元4大学で非常勤講師。元学童保育支援補助員。現在、東京理科大学非常勤講師、たまプラーザがん哲学外来カフェ代表。青山学院大学理工学部化学科卒業、同修士課程修了。東洋醸造(現、旭化成)研究員、東京大学研究生、東京工業大学助手(理学博士)、米国パデュー大学とカリフォルニア工科大学博士研究員を経て、広島大学助手、講師。徳島大学助教授、教授、総合科学部長、2012年3月定年退職。専門は化学(有機合成化学)。教育、生と死、超高齢多死社会、文明の危機に関する拙文執筆と講演。著書に『定命 父の喪・母の喪―息子が遺してくれた生き直す力―』文芸社。横浜市在住。