菅首相は4月22日、地球温暖化対策推進本部で日本の2030年度における温室効果ガス削減目標を引き上げ、30年度の排出量を13年度比で46%削減し、同時に「50%削減の高みに向けて挑戦を続ける」と発表しました。
「脱炭素」「カーボンニュートラル」「カーボンゼロ」に向け、官民の動きが加速していますが、経済産業省の「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」の14の重点分野を含め、やるべきことは数多くあります。
これに関して最近、筆者は本メディアに6つの記事を執筆しましたが、その中の1つが『次世代エネルギー「水素」利用の技術開発はここまで進んでいる』。水素の製造方法については同記事などで述べたとおりですが、今回は海底に眠っている”燃える氷”、メタンハイドレートを用いる水素製造の試みについて解説します。
メタンガスがどうして氷に?
氷のようなメタンハイドレートが炎を出して燃える様子を、テレビで見たことがある方も多いでしょう。このメタンハイドレートとはいったい何でしょうか?
メタン(CH4)は、炭素の数が1個の最も単純な炭化水素(炭素と水素からできている化合物、ガソリンなどの燃料)で、常温常圧で気体です。ちなみに炭素数2個はエタン(C2H6)、3個はプロパン(C3H8、プロパンガス)、4個はブタン(C4H10、卓上コンロやライターのブタンガス)・・・と続きます。
一方、ハイドレートとは水和物のことで、水分子を含む物質です。
一般的にガスハイドレートとは、低温かつ高圧の条件下で水分子が作る12面体、16面体、20面体のケージ(かご)の中に、炭化水素ガスがゲストとして取り込まれたシャーベット状の固体物質で、代表的なものがよく知られたメタンハイドレートです。
ガス分子が水分子から作られるケージの中に取り込まれるのは不思議な現象ですが、見た目は氷に似ているメタンハイドレートの重量の15%はメタンガス、85%は水です。